いかり肩ホネ五郎の病床寝惚け話No.11

このホネ五郎日記も連載二桁台に達した。
もっと、速いペースで書き進む心算であったが、何故か?月1回の著述と信じ難いスロウペースで推移してしまった。結構、通院とか雑用などで、それなりに多忙であったのだ。
過ぎた5月半ばで、退院1カ年が経過し。病気平癒とは言い難いが、格別の事もなく、フツウのQOLの日々を過ごしている。
まあ、ガン細胞もまたある種の生物?
税制上の扶養家族にはならないが、体内に悪ドク住みついて、払っても払っても立退かない、身から出ないサビのようなものである。
さて、そろそろ、このシリーズも終りが近い。
今日は、睡眠を扱う。
良い眠りは、宝くじを当てるようなもの。高齢になる程に満足感をもたらす眠りはまず無い。ヒトは夜眠るべきだが、寝室での眠りが特に酷い。
と言うのが、昨今の睡眠感想である。
と言いながら、不眠とも言えない。
日中と言わず、夕食後と言わず、どこでもいつでもタワイなくつぶれたように眠る。その締まりのなさ・無節操さが、よくない。
いざ眠ろうとフトンに入ると、寝つけない・長い眠りが続かない原因になっているようだ。
秘訣は深く考えないこと。これもまたある種の人生と受け容れる。
さて、入院中はどうであったか?
憶い出してみる。日中は時にベッドを離れる事を禁じられ、それが解けても、連日パジャマ姿で室内に留まっていたのだから、運動量からして・失われた筋肉量からして、眠りを催すほどの肉体的疲労の累積も全く無かった。
個室の中に暗闇は無かった。患者の顔に懐中電灯を当ててから、居るとばかりに確認する、無神経なナースもいた。あの世界も個人差が大きい。気づき・気配りは乏しい。
一晩に3回は、巡回する。それがナースルールだが。1度も覗きに来ない事もある、この世はほとんど当てにならない。
音の方も同じ。独りで個室に居ても、無音静粛状態が時に一晩中に亘って、砕かれることがある。
明日もこんな状態だと部屋を移りたいと申し出ようとおもむろに考えていたら、なんと隣の患者は、夜の間に冥界に旅立ったと遠回しに聴かされた。五月蝿かったのは付き添いだったのだ。
75日間の入院期間を通じて、3日くらいをのぞいて。ほぼ連日21時30分の消灯時刻前後に眠り込んでいた。今憶い出しても、順調な病院生活であった。
21時に催眠剤を服用し・フトンの中に居て、微動だにしなかった。
もちろん、あのコンドウ<近藤勇>ム君を大事なところに装着しているから、身動きは慎重であらねばならない。
でも、眠りグスリがいつも効くわけではない。
7階の病室から飛び降りることができるか?想定・試行してみたことがあった。なんと、ガラス窓は容易に開いた。格別アラームも鳴らなかった。
ただ、胸高窓だったので、吾が体力では窓の向こうに身を置く事が叶わなかった。
それだけの事でしかない。
眠れない夜は、ベッドに居て、吾が頭脳をなるべく使わないようにした。それが、最も短時間で睡眠状態に入れる条件であることを知った。
我が子にかつてラジカセなるやや小ぶりのオーディオ家電を買ってやった記憶があるが、今は中国大陸本土旅行中にたまに見かける程度の博物館入りシーラカンスだ。
現代はスマートの一語に尽きる。
パジャマの胸ポケットにすっかり収まるスマフォで十分だ。
これは、時計・ラジオ・カメラ・蓄音機・メモ用紙・電話機・懐中電灯・虫眼鏡・歩数計の要素をすべてこなす。
アト欲しい機能は、爪切り・温度計・スピーカーくらいであろうか?
手持ちのCDから録音していた音源を再生して、眠れるまでベッドの中で聴いていた。
スマフォのセルフタイマーを選んで、スリープオフさせれば、不本意な音源で目を覚まされる事も無い。
何とも、ドラえもんの夢みたいな時代が既に到来しているのだ。
と言うわけで、退院後の吾が自室のベッドサイドには、スマフォが3台も置いてある。
対外通信機能を果たすのは、1台のみ。他の2台は、通信以外のマルチ機能を発揮させている。
入院中に癒された再生音源を紹介しておこう。
いささか古いが、古謝美佐子の沖縄語エアーと姫神シンセサイザー演奏曲であった。
その後、姫神に会いに行きたいと想って、調べた。初代は、既に故人となっていた。
初代の星君と筆者とは、いわゆる同年生で、1週間と離れてない。
さて、障碍者として酸素吸入が必要になったことを機に、借家を出て、中古マンションを購入した。
この転居は前稿で書いたが、実相はこうだ。
降雪地である北陸には、自宅前の公道を除雪する自治会的規制がある。
パートナーが考えるに、病気上がりの老体が酸素ボンベを担いで、とても立向かえる仕業ではない。そこで一軒家からの脱出を構想して、降雪シーズン到来前に実現させた。
要するに一軒家に備わるこの大時代的な社会強制は、安いマンションつまり集団住居ブロイラーハウス<=鶏舎小屋>までは追いかけて来ないのだ。