か麗の島 No.17

台湾訪問記・北投温泉入浴編の続きであるが、温泉は台湾の首都台北市内にある。
なお、台北のすぐ北にある陽明山国家公園は、休止状態に入った火山地帯の内である。
放射線を発する北投石は、同公園内の北投渓谷などから産出し・輸出される。
一般に宝の山なる名言があるが、火山地域はまさしくそれに当る。
温泉も地熱も金・銀・銅の鉱石類も、噴火も火山性地震も、ともに火山が人間にもたらす賜り物である。
火山も北投石もメリットとデメリットの両方を併せ持つ。それが自然界そのものの真の姿である。
新事象の発見や新製法の発明は、人類が保有する知識の拡大と蓄積であるから。必要以上にメディアが吹聴したり・過大評価したりする、つまり騒ぎ過ぎによる困った風潮が先行しやすい。
最近では、小保方(おぼかた)インシデントとも言う。
しかし、その事実を冷静に展望すると、人類がそのことに単に未知であったに過ぎず。天然界の事象としては、地球草創期以来から存在した事象であることだ。それが真相たる客観的事実であることは、ほぼ不動である。
技術史において、メリット多く・デメリットの乏しい存在として思いつくのは、マルコーニィーの無線利用システム。
メリ・デメ双方あってほぼ五分五分なる評価とされるのが、ノーヴェルのダイナマイト開発である。
さて、核物理学の夜明けは、後者のグループに入るか?それとも廃棄されるか?果してその首尾はいずれか?
地表に人工太陽を造り出し・結果として人類を絶滅させるワザとなる点において、メリット皆無・デメリット100%とされる面もある。
人類史上、唯一原子爆弾の空襲を受け。大量の被爆による死者を出した列島は、放射能に対して猛烈なアレルギー反応を呈している。
それに加えて、2011.3.11の大地震津波直後に起った福島原発の心臓部たる原子炉でのメルトダウンメルトスルーなどの人災事故は、未だに事後処理の見通しも立たない深刻な状況にある。
この2つの事象つまり原子爆弾の爆発と原子力発電の暴走とは、核物理における放射線の人工的放出と言う点において同じ科学事象である。
なお、原子力発電は原爆の平和利用なる美名?を冠して、導入された。
つまり原子炉の内側では、原爆の爆発と限りなく類似の物理的・化学的反応が、現在進行中なのである。
原子炉の内側事象の問題点は、生物の細胞を破壊するほどの強力なエネルギーを放出する点にある。
これほど危険にして未踏レベルにあった技術であることは、列島導入の頃から知られていた。
その事実は、現在も・そして遠い将来においても、不変かつ・不変であり続けることだろう。
まだある。危険性の第2は、システムの管理が困難であることにある。
原爆も・原爆の平和利用タイプとされた原子力発電もともに一度点火すると、人間の意思では鎮火させることが難しく、エネルギー放出が数万年間継続すること。
点火後に燃焼速度を上げ下げすること=コントロールが困難であること。
いずれも核物理の常識である。
F1で燃焼制御棒が破壊されたことの推定は当為だが、未だに誰も観望することが出来てないし・可能となる見通しもまたない。
よって,未確認の事実でもある。
このことは、原子力発電の開発から列島導入・設置を通ずる期間も・今日においても、変らぬ科学的周知の事実ではあるが。
政治マターにおいてかつて、高度技術かつ未踏技術として隠蔽され、「安全神話」がねつ造され、広く世間に流布され・真相が忘却されてしまった。
原爆の開発は、第2次世界大戦の末期にUSAが実施したマンハッタン計画により遂行された。
その存在が広く一般に知られたのは、被爆国ニッポンの戦後においてである。
しかし、原爆の使用と点火後のコントロール困難さを30年も前に予告した天才がいた。
その人の名は、H・G・ウェルズ(1866〜1946 英国 小説・文明批評)
彼が原爆を予告したSF小説『解放された世界』については、前稿でも軽く紹介した。
序でに彼の略歴を述べる。
ロンドンの貧しい商人の子に生まれ、型どおり丁稚奉公など多くの職業を点々としたが。18歳の時に奇跡が起ったらしく奨学金を得て、理学師範学校<現・ロンドン大学・理学部の前進>に進み、優等で卒業し・理科教師になった。
間もなくジャーナリズムに転じ、小説を書くことになり。生涯約80年の間に100を超える科学小説を発表。代表作にタイムマシンや宇宙戦争など、人類の未来に暗雲を漂わせている点が注目されよう。
ここでは、世界大戦の直前に当る1914(余談だが、今年は開戦百年。更なる脱線ついで、ノルマンディー上陸70年)に公刊された『解放された世界』のみを採上げる。
彼はその中で、核分裂反応は一度始まると,人間の智慧とワザではコントロールできないと正確に言及している。
しかも、彼の予言どおりの自然現象が、その後天然ウラン鉱において発見された。
つまり人工着火によらない致死量を超える核分裂放射=生物細胞の破壊をもたらすレベルの高度なエネルギー放出の痕跡=が、自然界で偶然に起った事実そして同じ現象が将来も生じるであろうことである。
ここで擱筆するが、今日述べたことは、殆ど今日的・悲観的・一面的科学知識である。
明日は放射線科学にもっと夢があった草創期(=知識不足が招き寄せる科学万能信仰による核物理の誕生初期)について、述べることとしたい