にっかん考現学No.38

今日は前稿に引続き,領土問題について述べる。
メディアの報ずるものが、どれほど列島市民の大勢を反映しているかを伺う事は難しいが、メディアのサンプリングを経た画面の中の列島住民たちの主張は、意外と前時代的にして過激なものばかりである事に驚いた。
まるで、60数年前の敗戦と平和憲法の制定・施行を忘却したような虚勢・現今の国際政治情勢を踏まえようとしない無教養さがほとばしっていた。
そして、IT環境が激変した今日では、そのままの映像・音声をもって海外に流布する。
2011.3.11以後、世界は大きく変化したと。多くが認識する。がしかし、その認識と領土発言とは全く食い違っている。
この列島人の旧態然とした明治軍制そのままの領土観はどうした事か?
原発を推進した古い時代の旧世界の価値観を、未だに引きずっている。周辺国に侵略しようとする国策を未だ保ち続けていると、想われてしまった。
その結果、東アジアに位置する隣接国・地域のみならず。世界の論調が、日本に背を向け始めている。
3.11以後に限れば、核疑惑の問題が再燃したことを忘れてはならない。
日本が「核保有する」との懸念は、野党第1党に強硬論をもてあそぶ党首が出戻り的に選出されると、一挙に具体的な懸念と化してしまったのだ。
以前から原発を50基以上運用してきて、燃料としての核物質から燃焼後の核物質までを大量に保有している。
それで疑われないと考える方がおかしいのだ。
爆弾も発電所もともに核施設であり・どんな形体であれ核物質は即・核爆弾の原料である。
原発貯蔵の核物質を転用して、爆弾を作る技術は全く難しくないのだ。
原発を全部停めたら、終わりと考える列島市民が多い。
がしかし、現今の国際政治情勢を踏まえれば、国内に存在する全ての核物質を国外に移出するまで。”ザ・エンド”にはならないことを、肝に銘じるべきである。
そろそろこのテーマを終えるべく、筆者なりの”領土問題”に関する展望を述べることとする。
○ 列島人は、海洋民族の伝統は持合せない海岸民族であること・・・・末尾に注あり
○ 択捉島<エトロフ>・国後島<クナシリ>などの4島は、北海道に近接し・それに属する存在であること
○ 竹島独島と尖閣は、居住民も無く。上記4島(=本土の接属島)とは、明らかに異なる遠隔の離島であること
○ 遠隔離島は、漁業者の操業と地下資源の事、つまり純粋に経済的利益に割切って処理するべきであること
  遠隔離島が重要度を増したのは、つい昨日のことである。
  戦後の技術革新(=具体的には遠洋漁業の普及と深海掘削技術の普及による。
  後者は、海底油田の発見・海底レアメタル鉱床の発見)や戦後の国際政治において経済水域を許容するようになった=所謂超現代的事象に由来すること
上記4点を踏まえて、導きだされる打開策は。
遠隔離島2件は、関係国の共同管理域圏とする方向で解決せよであり、対する北方4島は、領土として1日も早く実効支配を回復するための措置を採るべしである。
北方4島問題は、格別高度な外交課題である。
まずミズーリ体制を終わらせ、その後に着手するか・終了交渉と同時並行的に処理したい。
日露関係は捩れが深く・しかも長期固定化が外交的解決を難しくした。その原因は戦後処理の失敗と放置に由来している。
日本は、ミズーリ休戦協定に調印参加した全当事国とサンフランシスコで会同して調印しなかった。しかも、サンフランシスコ体制の主役である米国の正規軍が駐留解消しないまま現在に至っている。全き独立国とは言いがたいのである。
要するに、列島はミズーリ体制とサンフランシスコ体制とが入り組んだ複雑骨折状態から脱していない。
しかし、現実問題として、アメリカ社会が、軍産複合の政経癒着した腐敗から立ち直ることは、百年河清を俟つようなものであるし。ロシアなどが、米軍駐留のままで独立国であると追認する事態は想像しにくい。
ではどうするか?平和憲法を護るだけでは、もの足りない。平和憲法に励むべきである。
つまり、戦力を放棄し・一部の国との相互防衛軍事協定を破棄し・あらゆる暴力組織を国内から排除し・永世中立の体制を維持する。
その結果、全方位で・偏り無く・等しく・善隣友好の姿勢が,国際社会から公認されることとなろう。
さすれば、北方4島は、過去の歴史事情とは無関係に、まさに地政学的に属さるべき本島と一体の帰属を実現するべき事態を迎えることとなろう。
<注> 海岸民族なる言葉は、筆者の造語であると言うつもりは全くない。祥伝社刊行の謎の日本海賊に書いてあったように記憶するが、再度精読しても見つからなかった。

今日はこれまでとします