泉流No.105・106 福吹寿老の続き

今しばし  此処に留まれ  赤とんぼ
海ごしに  庄内の里を  眺めるか
〔駄足] 前稿で福吹寿老の急な旅発ちについて述べたが、その続きである。
近親者だけで行われたお別れの会も終わり、4日めに慌ただしく帰路についた。
概ね片道500キロ・メートルを、立ち急いで戻る必要があったからである。
出発して間もなく、高速道路?を選んだ。いつもと異なり、少しばかり余裕がなかったから。やむを得ない選択だ。
最上川取材の折は、新潟空港ICから北は、一般道路を利用することにしている。
片側1車線しかない変則道路だから、ストレス回避のためである。
あっ名ばかり高速の文字を間違えた !! 
血管ではなく欠陥のほうの”梗塞”の方を当てようか?
通行料金の徴収を確保する檻の中だから”拘束”の字を当てようか?
官僚の言葉の使い方が、いい加減。つまりデタラメな間は、外国軍の駐留によるイライラや原発が吐き出す放射能汚染から逃れる安全も安心も、実現する見通しは暗い・・・・・
要件を欠く道を高速道路扱いするとは、新潟や山形の県民センスを疑うしかない。
困った太っ腹か?この国のリーダー不足は地方もまた変らずの様相だ?
さて、本題に戻ろう
貸切状態の高速道路つまり庄内平野から仰ぐ、鳥海・月山のそれぞれの峰は、雲か・霞か明らかに拝むことはできなかった。でも陽の光が注ぎ、まずは穏やかな旅日和であった。
その空一杯に飛んでいる赤とんぼを見た。
福吹寿老の霊魂が、吾が旅発ちを見送っているものと感じた。
そこで、此処に留まれと呼びかけた。
此処とは、我が身に向かっての呼びかけ=還らずに庄内平野に留まれ。霊に対してはこの世である。
No.106の泉流にある初句「海」とは、鳥海山の中腹にある「鳥海湖」を指す。
鉾立(ホコダテ)からの登山ルートを御浜まで辿ると、頂上がすぐそこに見え。足元すぐの位置に「鳥海湖」があり、その湖面ごしに眼下の庄内平野を一望する。
おそらく則腹噴火口に雨水が貯まったのであろう。いかにも鳥にとっての「うみ」の大きさであり、眺望の中の平野の更なる奥にはホンモノの海=日本海が見える。
〔駄足の蛇足] 故人は”あぽん”に行くのが好きで、日課としていたらしい。
公営銭湯の名であるが、そのユニークな発音が基?になってか?
英国の地方都市であるストラトフォード・『アポン』・エイヴォンと姉妹都市になったのだと言う。
親爺ギャグかと想って,笑ったら。疑わざる事実だと言う。
そう、彼の地は、W・シェークスピアの生地である。
英国きっての劇作家と山形県遊佐町とは、親しい関係にあるのだそうだ。
彼の地にエイヴォン川が、遊佐の地に日向・月光(にっこう・がっこう)の両川が備わる。
まずは対等な配置であろう