にっかん考現学No.34

言葉のことを論ずる場合、地理的な位置関係=近いか・遠いかは、互いに影響を及ぼし合う機会の多少を考えれば、納得しやすい。
以前にも紹介した金容雲氏の著書・日本語の正体(三五館2009年刊)141頁に、「日本語の基礎語(210個)のうち90%以上が韓国語と関連ある・・・・」とあります。
基礎語とは、何を指すかが不明であり。対応語の掲示など具体例が無いまま、結論らしいセンテンスがあるだけなので。単なる引用に留め今後深く考究したうえで、筆者なりの見解を述べたいと考えます。
さて、前稿などでアイヌ語地名などを紹介しましたが、地名こそが基礎語の有力な素材であると考えます。
この数年、最上川の事が気になって。春と秋とに山形県のあちこちを、訪ね廻っています。
まだ、これと言ったテーマらしいものにヒットしないので、いささか心細いものがあるが。生来ノンビリ屋なので、その分長生きをしてやろうと鷹揚に、さして構える事もせず。時間だけが、過ぎて行きます。
国道7号線は、日本海沿岸道です。マイカーで走行していまして、概ね左手側が海・その反対側に背骨たる列島山脈を遠望しつつ。北上して最上川河口の酒田市に達し。その辺から折返して、帰路は南下。左・右の山・海が逆転するわけです。
そして、前方の視界が狭くなる、進行方向の景色が山がちになると。いよいよ県境なんだと感じる、そんな走り方です。
例外は、山形・新潟の県境である鼠ケ関付近です。民家と民家の間を流れる溝、大人がやすやすと。ヒト跨ぎする程のごく小さな小川が県境であると、聞いて意外でした。
そこの町の名は、温海町(あつみ・現在は鶴岡市)。温泉のある処、静岡県の熱海(あたみ)もまた温泉地ですが。この2つの地名は、発声も文字も全く一致ではないが、何となく重なるし。温泉がある・海沿いの町としても共通します。
アイヌ語で温泉を何と言うか?それはさておき、地名が似通う事は、地形なり・地域の属性なり。何らかの共通性が見つかり、そしてその言語的意味や背景つまり言葉としての命名の由来が繋がるとしたら。どうでしょうか?
地名は基礎語たりえる事にならないでしょうか?地名は世界共通のランドマークです。
更に、地名は、容易に古代へ繋がる音韻を保存しているのではないでしょうか?
地理・地名は、時空軸を画するiPS細胞=万能な存在であるに違いない。
次に考えるべき事は、その地を発見したのは、何時頃か?誰なのか?どんな人達だったのか?何処から?来て・何処へ?向かったのかなどなど。遠い昔の事をあれこれ想像します。
最後に単なる思いつきを述べます。
「あつみ」の発見・命名は、安曇海人族であったであろう。
航海と漁撈の海生民族である安曇(あずみ)氏は、九州を本拠地とし、宗像や住吉の神々を祀る海人族と共通の祖先を持つ海の集団であったらしい。当然、彼らは海から「あつみ」に来て・海へ戻ったに違いない。
海人族にとって、日本海欧亜の中間にある地中海のごとく・東アジアにある閉じられた内海として、認識されていたに違いない。
「あつみ」の対岸は、韓半島なのだが。彼の地に温泉は皆無なのだと言うから驚いた。
それで、この面から迫る当面の日韓文化比較は、手詰まり状態である。
今日はこれまでとします