にっかん考現学No.33

前稿では、現にある国・地域である日本・ハングル使用の韓国・中国の東アジア3カ国の言語を比較・対照し、図式化した。
しかし、所謂漢字圏と言えば、ヴェトナム=東南アジア域も含めるのが本来である。
ただ、現在のヴェトナムの文字は、表意文字でなく、一見アルファベット?に見えるものを使っている。その点において、ハングル使用の韓国と同じ悩み=歴史文献へのアクセスが困難になる不都合=が、早晩表面化する事であろう。
なお、ヴェトナムの事は、ほとんど知識が無いので深入りしない。
序でに漢字圏なる言い方が出たので、台湾にも触れておく。
本稿は政治を論じないので、台湾が中国の一部かどうかの議論には全く触れない。
この国・地域で主に使用される中国語の表記は、繁体字と言われる。その意味は、省略しない字体を指す。
そうなれば、省略字体とは何か?となる。
これの答えは、結構難しい。
中国本土の簡体字・日本の当用漢字までとするか、ひらかな・カタカナを含めるべきや否や?とまあ、百科撩乱となるは必至なので、確定的な見解は述べられない。
さて、ここで漢字圏なる言葉を使ったので、いささか老爺的断わりを述べておく。
言語の表記法つまり文字として共通性が認められる時空間的広がりの範囲を区切っているに過ぎないのである。
言語と言えば、表記に先立って・口に出し耳から入る音韻の要素がまず尊重されるべきであり。表記法は二の次であることを常に想うべきである。
何度も言うが、日・韓と中国とでは、異なる言語体系分野に属する「ことば」を使っている=その単純な事実を忘れてはいけない。
ただし、この東アジア3国・地域に住む人たちは、互いに筆談によって、かなりの意思疎通ができる。手と目による対話だ。しかし、耳と口による対話では、意思の伝達はほとんど困難である。
次に、老爺的断わりの第2弾=最後だが、時間・空間的範囲で区切る以上は、現に存在しない国・地域も対象となることを忘れてはならない。
都合の悪い事は速やかに忘れる・相手の言い分にはいっさい耳を傾けない・自分の事以外は関心が無い。
この3つが全部揃う状態を老人痴呆症候群と言う。別の呼び方では、歴史認識欠落症候群とも言う。
筆者のハンドル・ネームである「hodgy」=ホウジィと詠む。漢字では呆爺と書く。意味は阿呆な老人だから症候群のうちに含まれる。最近の日本周辺の領土侵犯報道を見聞きすると、このことをつい思い出す。この国の民情のひとつに、明治軍政的君主制の残滓とも言える歴史認識欠落症候群は、未だに色濃いものがある。
まあそういう事情だから、現に存在しない消えた国の事まで追いかけてどうする?と、大勢の批判を浴びる事を覚悟で、漢字圏対象国・地域を掲げる。
渤海<ぼっかい>と西夏文字西夏<せいか>を忘れてはならない。
以下は、広辞苑小学館百科事典からの抜粋である。
渤海=現在の中国北東部から北朝鮮北部やロシア沿海州に及ぶ空間域に、698〜926まで存在した。中心構成は満州ツングース系の民族(靺鞨か?)で、唐に滅ぼされた高句麗人が復興を掲げて建国し、約200年後に契丹の攻撃を受けて滅亡した。
西夏=現在の中国西北部(甘粛・オルドス)のシルクロード経路に、1,032(or 1,038)〜1,227まであった。主にタングート族から成り、東西貿易のメリットを享受するべく宋の支配から逃れたが、建国約200年を目前にしてチンギス・ハンに滅ぼされた。筆者が存在を知ったのは、邦画「敦煌」からである。
今日はこれまでとします