にっかん考現学No.32

前稿では、ハングルの事に少し深入りし過ぎた。
言語学の知識もなく韓国語の習得もままならない初心者が、あれこれ観相を述べるのは如何なものであろうか?
さりながら、いま少しハングルについて触れておきたい。
まず言葉ありき、後に文字が生じた。その文字だが、必要に応じて長い間に自然発生的に”生じた文字”=漢字と”生じさせた文字”=ハングルとの間には、かなりの開きがあるような実感がある。
東アジアの3カ国、中・韓・日を比較してみても、3者3様である。
この際、素人の踏ん張り。えいやっと図式化してみる。

  国名<現代>   文字の特徴      筆者の独断と偏見によるアクセスの難易度
  中国語      表意文字体系     視覚に訴える、判読容易で速読しやすい。
                      文字総数・画数も多い。表記困難度が高い
  ハングル     表音文字体系     視覚による差異乏しく、判読困難・速読し
                      にくい
                      文字要素=○・棒・旗の3つの組合せと配
                      置位置=上下左右で表記。速記が容易
  日本語      表意と表音の併用   最も速読しやすい=表意文字の抜読みと
                      構文の肯定・否定の別&前後の順接・逆
                      説で大意を掴める
                      2文字体系使い分けが苦労。文字数が増
                      え負担重い。2体系併用の二重苦は、
                      表記での最も高い困難度に顕著
                      ワープロパソコンの電子機器や自動変換
                      利用でも入門者の高いハードルを解消しない。
ここでは言葉だが何によらず、図式化・簡略化は危険である。拙速百姓読みの誹りを免れない・・・
この3カ国は、ハングル一辺倒化する以前は=つまりざっと半世紀ほど遡れば、使用文字の共通度が高い所謂漢字文化圏であった。
ここで冒頭に述べたことを繰返すが、文字と言語とは別である。日韓の統辞法と中国のそれとは、時代を通じて異なっている。このことを素人流に言換えしよう。
日本語と韓国語との間は、句・説・文の並べ順が共通だが。漢文で習う文側の返り点=レ印や転倒記号=二・一/下・上が必要となるように、中国語のみは別系統の言語である。
序でに、アイヌの言語だが、日韓の統辞法と同じ系統の言語らしい。山田秀三の「アイヌ語地名を歩く・北海道新聞社1986・6月刊」52頁によれば、語尾にくるk・t・pの聞き取りが難しいらしい。ここで想像たくましくすると、日韓の中間に位置する系統の言葉である可能性がある。アイヌもまた日韓と同じ無文字社会であったようだ。
最後に日本語における仮名文字表記が招きやすい誤解について、一言触れる。
濁点・半濁点なる付加的表記法が齎らす文字的類縁関係を音韻言語の分野にまで拡大してはならない。
「は」と「ば」と「ぱ」 「か」と「が」 「さ」と「ざ」 「た」と「だ」の各行語の間に、発音上の類縁・近接関係は殆どないと考えたい。
「しゃ・しゅ・しょ」と「じゃ・じゅ・じょ」 「ちゃ・ちゅ・ちょ」と「ぢゃ・ぢゅ・ぢょ」の各対応語の間
もまた同じである。
今日はこれまでとします