にっかん考現学No.27 あすかの14

前稿において、飛鳥は日本の故郷そして日本人のルーツは、渡来人であると宣告した。
その上で、厳密な言い方に拘れば、大王家のルーツだが、、、、、
更に、多くの日本人が共有する純血民族観をもってすれば、受容しがたいはず、、、、
と。いくぶん奥歯にモノの挟まるような言い方をした。
その後段で、1998年10月の金大中・大統領の来日時における平成天皇の談話などを述べたわけだが、その言わんとすることは、「渡来人」とは、韓半島を直前の出発陸地とする例が大半であること。とりわけ大王家のルーツの場合、厳密に該当ありであることを明らかにしておきたい。
「厳密な言い方に拘る」とは、ある背景を踏まえた表現で。以下の事情による。
1500年もの超長期の時間軸を遡れる名門名家は、唯一平成天皇ファミリーくらいのものであろう。そしてこのファミリーの始祖は、漢風諡号=継体帝であると多くの歴史家が認めている。
しかも、以降今日まで男系血統の連接があると考えてよいようである。
次に、「大王家のルーツ」の意味だが、『大王』なる用語の使い方は、引用書=飛鳥(門脇禎二著・2012/7月吉川弘文館刊行)に従った。筆者の理解だが、大王は古代列島における地域国家の統治者の呼称であり。天皇号は、後世の統一国完成時の統治者の呼称として位置づけていると解される。
なお、その時期を門脇氏は飛鳥時代の後期としているようだが、筆者は平安遷都以降の頃としているので、両者の間には約百年のズレがある。
最後に、「純血民族観」だが、おそらく耳新しい言葉であろう、筆者の造語と言えるかもしれない。短絡すれば、国学者が描く日本観の全てを指している。前稿では、平成天皇の業績として、近隣国との友好親善をうたったが。曾祖父に当たる王政復古王朝の初代帝王=明治は、侵攻戦略を国是とする軍政体制を掲げ、国民に対しても強い緊張を強いた。国民教化の基本にあった思想が、おそらく前代から唯一継承した国学思想による『神国神話』にして『純血民族思想』であった。
以上が、奥歯にモノの挟まるような言い方の補足だが、「多くの日本人が共有する」とか・「多くが受容しがたいはず」は、国定教科書的類推でしかなく、具体的根拠をおさえているわけではない。むしろ、多くの現代日本人は、自己啓蒙的にして・開明的知識人であって・非ヤンキー的教養人であると信じている。
なお、今日の稿を閉じるにあたり、蛇足だが一言加えておきたい。
統治ファミリーの血統連接を男系とあえて明言した背景であるが、アジアにおいて、特に李朝史において、男子継承は絶対的であるようだが、世界規模では希少例であると考えたい。
欧州の王族継承ルールは、まず第1に血の濃さであり、男女を論ずるのはその次であるようだ。しかも、養子嗣関係を排除する点で、血統主義に対する拘りはより強いようである。
今日の稿に出現した継体帝の場合も、王妃の血統において前王家とつながる存在であるが、歴史書の記事をどこまで史実と扱うべきかとする史料評価の点において、国学の盲従的信仰は時代錯誤である。君主を論ずるもまた同じだが、、、
この点で、もう1つの引用書の著者である梅原猛氏の著書「神々の流竄」を紹介しておく。31・39・45頁などに・・・史書に対する懐疑。つくられた史書・・・などの明文表示が散見できる。
今年は、古事記1300年に当たるが、3.11の後であるだけに、明治の風潮から脱する必要を痛感する。
そのために読むべき手軽な本の1つであるに違いない。
今日はこれまでとします

神々の流竄 (集英社文庫)

神々の流竄 (集英社文庫)