にっかん考現学No.23 あすかの10

前稿で万葉集に出現する「あすか」は、44件であると書いた。
本日になって、索引を頼りにして各巻を開き、該当する歌に個別に当たってみた。
記述の進行上、前稿では索引の見出しNo.をカウントして、「あすか」地名の数を決めたが。アトになってゆっくり、各歌ごとに文字表記と訓み下し表記を当たってみたら。出現件数は43件となった。
前稿の44は、誠にバツが悪いが、43に訂正させていただくので、あしからずお許し願いたい。
因に歌集なのに○首でなく「○件」でカウントする理由は、テーマが地名としての「あすか」だからだ。
次のテーマは、どんな文字表記であるか?
岩波古典体系では、見開き頁の右側が文字表記・つまり万葉仮名。左側が対応する訓み下し表記である。
   左 = 訓み下し表記が       右 = 文字表記は、
1、 明日香で              明日香とするもの
2、 飛鳥で               飛鳥とするもの
3、 明日香川で             阿須可河伯<ただし、伯のみ一部底本の泊を校注者が改めている>
上表を掲げた意図は、文字表記を使い分けする理由は何か?を知りたかったことにある。結果として、究明出来なかった。
3のグループに限れば、巻十四ーNo.3544・3545にのみ、出現する文字表記であって、中西進氏の見解では、一説に東国の川=所在未詳と解説している<岩波古典体系では第3分冊p450〜1>。周知の通り、万葉集の各巻の構成や成立事情は、それぞれであるが。巻十四は東歌を収載する点で、特異の巻である。
次に、1と2のケースに、少しだけ踏み込むこととする。
A、 「宮・旧き都・〇〇宮なる表示の部分文字」として出現するケースが10件ある。これ等は歌の中に出現するものもあるが、その数は圧倒的に少ない。歌以外の「標・題・題脚・左」の文中に多出する。いずれも歌の成立事情や成立年次を説明する文の中であり、万葉集編纂が緻密であると思われる巻一・二・三に集中する。
特異の巻として、巻八ーNo.1465題脚(1例のみ)がある。
B、 訓み下し表記が「明日香川」とするケースが26件ある(うち2件は上述3のグループ)。現存する川の名は、飛鳥川と表示され<奈良県&大阪府に各1>、明日香川と表示される川は無い。全てが歌の中に詠み込まれ出現する。
C、 上記A・B以外に単なる地名の「あすか」として出現するケースが7件<明日香川の真神が原=巻二ーNo.199の1件を含む>ある。いずれも歌の中に詠み込まれ出現する。
今日はこれまでとします