にっかん考現学No.21 あすかの8

万葉仮名のことも、素人である筆者にとっては、気が遠くなる課題である。
「仮名」は漢字を使って民族固有の言葉を表示する=借字のことである。
古事記の解説を読んでいて、気が遠くなった。古事記を読んでいた訳は、前々稿No.19 あすかの6で、既に予告したが、「古事記1巻読破」を始めたのである。
その時、覚悟云々と書いたが、始めてみて、覚悟を越える至難の業であると感じた。
さて、本筋に戻ろう。
○ 古事記祝詞(岩波1958刊・日本古典文学大系)の解説・13頁10行を引用する。
  「 元明天皇の勅命を受けた太安万侶は、稗田阿礼の詠むところに随って、
    漢字の音借と訓借とを適当に塩梅して古言古意を失わないようにと
    苦心しつつこれを再文字化する・・・・<以下略> 」
字面は読めても意味が解せない。とりわけ 漢字の音借と訓借が、何を意味するか?
おそらく、万葉仮名の成立を、指しているのであろうが、筆者に説明する力がないので、上記の通り引用文を示すのみにとどめた。
○ 万葉学者の中西進氏は、万葉集朝鮮語でよむ研究に着手されて、既に久しいらしい。山上憶良朝鮮半島から渡来した万葉歌人であるとする仮説を創称し、定説に至りつつあると言う。
紹介例はまだある。なお以下の引用的紹介文は筆者による摘出要約なので誤解しない注意が必要。
○ 李鐘徹(イ・ジョンチョル 1935韓国生まれ、文学博士、翰林大学教授)氏は、その著「万葉と郷歌<ヒヤンガ>」(1991年9月東方書店発行、翻訳は藤井茂利・福岡大学教授。原著は1983年ソウルにて刊行)において、古代韓半島における漢字表記法の受容は、日本古代のそれと同じであり。漢字借用による表記法を渡来民が伝授したこと。万葉集4,500首<ママ>に対して、郷歌は現存数が僅か26首に過ぎないが、一定の共通性が認められる。借字を運用別に訓読字、音読字、正音字、正訓字などと整理区分し比較検討している。
○ 金容雲(キム・ヨンウン 1927生まれ、理学博士、檀国大学教授)氏は、その著「日本語の正体」(2009年8月初版三五館発行、なお、著者は日本滞在歴があり本書は日本語で書かれている。専門は数学だが、日韓文化比較の大御所的存在)で、日本語と韓国語の近縁性を示唆。漢字借用における歴史的過程を比較考究している。漢字を齎らし万葉仮名の形成を指導した百済言語学者が渡来した事実、韓半島が先行して漢字を受容した先駆的経験=吏読<リトウ 新羅式万葉仮名>を紹介(訓読法において同根)。ハングル<15世紀世宗大王が創作させ制定した音標文字>との差異を論じている。
因みに、漢語を踏まえて成立したハングルだが、最近は民族固有語の復活が著しいと聞く。
今日はこれまでとします

万葉と郷歌―日韓上代歌謡表記法の比較研究

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日本語の正体―倭の大王は百済語で話す

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