泉流No.66 新潟港

* ふる雪や  ふな江ふる町  ふりにけり
〔駄足〕 もう4半世紀にもなろうとする1988年の作、当時の勤務地が新潟市であった。
ふる雪は、降る。ふな江は、船江。ふる町は、古町。ふりにけりは、降ると古るの両義である。
17音のうちに、「ふ・音」が4つ。4分の1弱のシェア、それを狙って作ったが、実景句でもある。
船江町も古町も、ともに新潟市内の町名である。ただ、古町は夜となく昼であれ、体験とともにある盛り場だが、船江の方は、想念の呼びかけでしかないから、現実の町名を踏まえるべきでない。
想念の船江とは、舟泊の河港の意味つまり古い時代の新潟港を指している。
〔駄足の蛇足〕
新潟の海に湾はない。舟も夜と朝の間は泊まるから、湾の代りをする舫い場が必要である。
新潟港では、信濃川の蒲原津(かんばらのつ)と、阿賀野川の沼垂津(ぬったりのつ)が舫い場であったろう。
海族の末裔なので、そんなどうでも良いことに関心があるが、果たして新潟港前の2つの大河は、湾の代りが勤まったのであろうか?
手元の資料によれば、この2つの河は、どっちもビッグ10に入っているから、流域面積か幹川長さのいずれかの点で上位にある事は違いないが、それ以外のデータは不明だから、何とも言えない。
因みにビッグ10の中で、湾に注がない河がもう一つあった。山形・酒田が河口の最上川である。
それ以外の7大河川は、すべて海湾に注いでいるのだった。
そうそう、老爺心ながら一言申し添える。銚子に湾はないが、坂東太郎の利根川は、人工放水路を銚子に付けており、本来の河口は東京湾である。
新潟と言えば、雪、コメ、酒、白鳥、朱鷺などがイメージされる。かと言って、越後五白などと括る言い方はない。
細かい話になると、朱鷺の扱いは微妙である。
まず色。朱鷺は鴇色であって、白に含まれないカラーであるとする意見もあろう。