2012年頭のことば

2012年の始まりは、世界でも最も短い詩の形である「泉流=せんりゅう」で、表したいと思います。
* No.62  朝びらき  一胞帯水  繋ぐ海
〔駄足〕朝びらきとは、夜があけること
一胞帯水<いちいたいすい>とは、ここではユーラシア大陸の東にある海を示します。
繋ぐ海とは、一胞帯水の果す役割をあらためて再言しています。

〔駄足の蛇足〕
年頭まず心に浮かんだことは、眼の前にある大きな海のことでした。その海を新年に相応しい言葉で表したいと考えました。
新年に相応しい言葉とは、ここでは新しい朝の到来であり。その海に乗出すことが新しい年の目標となる事を示すために「朝開き」を選びました。
一胞帯水は、弧状列島の西岸と韓半島沿海州東岸とカラフトとから成る陸地に囲まれた、内海です。
海は隔てる存在とも繋ぐ存在とも、両義性を備えております。
生来の関心は、日本人はどこから来たか?を究めることにありますが。
ひょっこりひょうたん島から始めると、海はまず繋ぐ海であったのです。
ところが、人類史は間もなく抗争する獰猛さを競う時代に移行したのだが。
史上最強の騎馬モウコに敗退しなかった、おそらく唯一の例となった列島住民は、海は隔てる海であることに着眼し、自らを神州の民と誤信するに至りました。
さて、その誤信は、航空爆撃やミサイル飛翔のハイテク戦闘状況でも揺らぐ事がない存在なのでしょうか?
とても難しい設問ですね。
昨年の大災害を機に科学史上かつて無い規模の大きな転換が予想されます。
新しいパラダイム、脱イデオロギーを踏まえる近未来は、未だ見通せる自信がありませんが、競うことを離れて共に分け合うことに基礎を置く方向に向うよう期待しています。
ユーラシア大陸には、2つ地中海があったのですね。西の方の地中海は、西欧文明のるつぼの役割を果たす舞台でした。封鎖される過去は、ほとんど無く。終始開かれた海であり続ける存在、あえて捜せば一度だけ、全欧州の陸地を征服したあのナポレオンが封鎖宣言を発したが、その提唱は実現しませんでした。
さて、身近にある東の方の地中海は、如何に?
渤海使の往来に、北前船の活躍など、浮びましたか?
これから取組みたいテーマですから、語るべき何もまだありません。
最後に先例を掲げておきます
朝開きは、万葉集=第9巻1760番<紀伊国由良町の釣り船を叙景>、第15巻3596番<遣新羅使人の歌群より>、第18巻4065番<大伴家持越中国射水郡で書留めた私家集の歌群より>に3首。百人一首の朝ぼらけに当るか?
一胞帯水は、一衣帯水(出典・南史、陳書、後主紀。長江を指す)を踏まえつつ、河川でなく海を示した。
本年もよろしくお願いします