泉流No.61 海は一つ

* しまふたつ  やまみっつある  こしのうみ
〔駄足〕これは1985年の作である。
もう四半世紀も昔のことだが、新潟に住んでいたことがあった。
この句は、1、2、3の数を折込んで作ってある。
しかも、実景を踏まえた。
にいがたの浜から見える島は、佐渡と粟島の二つ。
同じく見える山は、角田山と弥彦山である。三つにひとつ足りない。実景句であるから、ありえないこと。
残る一つだけの、実景の中の自然は、何でしょうか?
〔駄足の蛇足〕
米どころニイガタは、空間スケールが大きい。
当り前のことを殊更言いつのる、それも体験を踏まえていればこそ、おろそかにしない。
その点では、時代も人物もてんで及ばないスケールだが、良寛句集に『天上大風』とある辞語に、納得を覚える。
弥彦連山の中に、良寛ゆかりの国上山がある。
しかし、国上山はカウントしない。実景の中にないからである。
実景の中の弥彦は、美しい双峰山である。よって、名は一つだが、峰二つをもって2とカウントした。
その国上山だが、立つ位置を内陸に置き。越後平野ごしに眺めると、弥彦山の左側にある。しかし、その場合は、ヘリコプターにでも乗れば別だが、並の姿では海も島も見えず、すべて山の陰になる。
さて、宿題の答、越佐海峡=海となる。
こしのうみとは、漢字にすれば越の海だが、福井県嶺北(れいほく)より北に位置する海がそれにあたる。
越の海の最北端は?・・・となれば、仮に津軽海峡の南までとしておこう。
北海道の存在が、大和朝廷に知られるのは、相当後世になってからのことだからである。
さて、最後に全17音をひらがなにした意味であるが、知る人ぞ知る新潟生まれの歌人会津八一に因んだ。
鹿鳴集が代表作だが、寄居浜を彼は散策したことであろう。
この新潟海岸は、奥の細道芭蕉も踏みしめている。
童謡?砂山も、佐渡おけさも、ともにそこにある。

海やまのあひだ・鹿鳴集 (和歌文学大系)

海やまのあひだ・鹿鳴集 (和歌文学大系)