バリ&ギリ南洋見聞記No.30

ギリ渡航記の3日目は、2泊3日の行程の初日だが、ギリT上陸がいよいよ始まる。
昨日の写真を見た人は、何を読取ったであろうか?
そうだ、港湾設備は無いのである。堰堤で囲まれた穏やかな内水面はない。でも、上陸の際に浮き桟橋に接舷できたから、まだよかった。すぐに宿に入り、休んだ。消化器系はすっからかんだったが、戒めの意味もあって、この日の昼は抜いた。
宿はIT時代よろしくインターネットで手配済であった。
新聞、ラジオ、テレビ。そしてワールド・ネットが繋ぐコンピュータ通信、次々と飽く事なく新顔を見せつけるメディア。
彼等の悪智慧に縁遠い時代遅れ?の老児だが、それでもヴァーチャルとリアルの隔差に悩まされる。
ネット上に存在しないものは即ち無視される。仮に実在しても無いと同じ事とされる、勢いある?ネット・サーフィン時代だが、ノリの良い?英語版ガイドブックは、新興の観光地として持上げていた。
何が観光?
港もなく、行政官署が1つもなく、上水道に塩分が混じる、どうも定住者が皆無らしい。
どこが観光地なものか?
遠い将来であれば有望に間違いない。
今ここにたむろする3種の人類は、肴穫り、サーフィン、麻薬常習。眼にする全う?人は、短期滞在者ばかりだ。
翌日からする事、日和山への登山と海辺での貝拾い。
まる2日海を眺め、波のうねりから白波が消えるように祈った。
だが、船酔い症候群者の祈りは叶えられなかった。
島から抜出る術が、高速艇乗船以外に無いことを呪った。
今時ネットの信者であろう若者達が、連日入島して来る。
ハギを濡らし、スーツケースを浜砂に漬込む、勢いある姿の勇ましい女性集団。堰堤を欠く上陸風景はとてもスリルがある。
熱帯圏の上空は、新発見だらけだ。
温帯気候しか知らないので見た事をそのまま語る、、、
目の高さの海陸は凄い強風なのに、終日晴天。しかも、はるか上空の白雲は驚くほど、流れず、形も変わらない。
夜も同じだ。星がよく見える。
夜通し起き続けていた訳ではないが、凄まじい狂風は全く止まない。なぎ倒さんばかり宿前の庭木を揺らし続ける。
室内に居ながらにして、夜通し月の位置が判る。
目が覚める度に、庭木の狂い踊りと空翔る月の傾きを、カーテン越に見た。
つまり、風も晴天も2泊3日の間、休む事なく続いた。
遂に島を出る日が明けた。帰路の高速艇=これまた朝1番の便だが、来島以前に予約してあった。予定時刻の2時間前から、海岸と船会社オフィスの間をおろおろうろつく。
船会社の支配人は、淡々と悠々と客を捌く。バリからの到着便が定刻を過ぎてなお、乗る船は姿を見せない。にもかかわらず、全く説明すらない。
定刻を遥かに過ぎて、あらぬ方向から我らが捕虜護送船はやって来る。
捕虜が全員乗込んでから、乗って来た船会社の独裁支配人は、ぼそっとロンボク行きに変更すると宣言した。
ロンボク島の不時上陸地は、今もってよく判らない。そこから陸路で護送され、昼飯を給与され、レンバル港からフェリーに積込まれ、ロンボク海峡を渡りパダンバイに達した。
計画では昼前に着き、パダンバイ港でランチの筈だった。実際に降り立った時は、もう夕暮れであった。
でも、まだ生きている。それでよい。
今日はこれまでとします


ギリT海浜の上陸風