バリ&ギリ南洋見聞記No.17

ウブドは緩やかな傾斜に開かれた町だ。北の方に火山があって高く、南に向って低くなる。
このミニチュア版ウブドの地形を、そのまま引き延ばせばバリ島の地形となる。
島はもちろん四方に海があり、山に降った雨は、地形を受け一斉に南に向かって流れる。途中田んぼを潤してから、最後に南で海に流れ出る。
なんとも、無理の無い自然風土に即した天然の灌漑方式である。東アジアに見るような大規模用水の建設・管理など権力組織の肥大化を連想させるそれとは異なる光景ではないか。
さて、本題だが、昨日は分水岐路の幅に触れたので、今日は続編。分水口の取付方向を扱う。
取付方向が異なる分水口は、よく見かける。
取付方向が2方向、1カ所で3つの分水機能を果す珍しいものを、バリで今回始めて見た。
棚田ではなくウブド市内の道路側にあったから、土地の制約から、1つの取水口が他の2つと異なる方向に設けられたのかもしれない(末尾写真参照)。
加賀平野で見た記憶がないし、おそらく無いのではないか?
では、分水口の取付方向によって分水比率はどうなるか?素人の哀しさで、直ちに答えられそうにない。高等数理系物理学の専門家を捜す事にしよう。
静水と流水の場合とでは、取水流量が変動するに違いない。静水状態を作り出せる現場は少ないようだ。岐路のすぐ上流に堰を設置する必要があるから。
写真を例に採る。上が上流で、手前に幅の異なる2つの取水口が見える。この取水口の幅口方向が流水と直角(=これが最も多い方式)であるのに対して、3つ目の取水口(=写真左側にある設置堤防の上端部にある切れ眼部分)は、取水口の幅口方向が流水と平行(=他の2つとは直角になる)である。
このケースは、水の流れに勢いがあったり・なかったりと日々の水量変化に応じて、口毎の取水量がふらつきやすい。
本題の最後は、2つの分水口の深さが異なるケース
分水岐路の深さを実測した事は一度もないが、分水口のすぐ上流付近の水紋や渦の形状の違いを見分ける事で、どっちがより深いか、それとも同じ深さかを見分けることができる。
バリ島4日間の棚田実査で、深さの違う分水口の例を見なかった。日本とバリは根本において異なる社会構造だと直感した。
明日に続きます