泉流No.46 地名由来の5

* 地名学  漢字は借りもの  音に拠れ
〔駄足〕本稿は「松任」地名由来考の続編=第5稿である。この3年間追いかけて来た事の中間報告である。先行稿はNo.41,43〜45である、必要に応じ参照されたい。
句の意は言わば当り前を明らかにしたもの。
本の学校教育は枝葉末節の締付けが強く、高校教育まではとかく暗記一辺倒で仕切り、四角四面で縛るから、天性に備わるアソビや自力発見の芽をも摘取り、無気力・無感動でゆとりを欠く歯車人間を叢生する嫌いなしとしない。
その点、地名学などはまったく高・稀・新<好奇心>への近づきでしかなく、何の見返りも効能も無い、無駄骨の極み。抑えておくべき心得を17文字にしてみた。
列島は古い時代に遡ると文字が無かった。地名もまた現代に伝わるまで文字文化との接触なる紆余曲折があった、後世・渡来人の文字づかい技能者が民族の記憶を文字化・記録した事を忘れないようにしたい。
さて、本題に移ろう。
地名は,地形の特徴を反映した普通名詞であると措定してみた。その場合、「おん=音」の共通性をもって浮ぶ地名があるので列挙してみる。
   マット  マツト  マツド  マットウ
   まつのと とのまつ とうまつ とまつ
この8つの言葉の中には,人の姓と重なる例がある事に留意されたい。
音の共通性は地形的特徴の共通性でもあるので、描き出してみよう。
海と陸の境界にある結節機能を果たす場所。それはミナト<トは場所、漢字で門・戸・扉・水門と書くこともできる>だ。港・湊に概ね重なる。
多くの港は、湾の最奥か、流れ込む川の河口または川水流速の緩い中流域<=江・エと詠む>。風上方向に小高い山・丘がある浦・ま(漢字でサンズイに間と書く)に設けられる。
港を管理する役回りの人が存在する。多々ある仕事のうち最も重要な役目は海上監視と通報。
狼煙<ノロシ>は上古時代の情報装置だが、定期定時航走の困難な帆船時代において、海陸双方にとって格別重要な機能であった。
小高い場所で狼煙を挙げ・夜間に灯火をともすことは、意図せぬ夜間航走を余儀なくされた舟にとって、有難い機能であった。このような機能を果したであろう高層建造物と言えば,真っ先に三内丸山遺跡の中央に設けられた遺構を思い出す。その存在が知られた今日、末松地区(野々市町松任の上流域)の木造遺構をもって廃寺跡に固定する狭見頑迷さに暗澹たる想いを禁じえない。
夜の海を行く舟に港の所在を知らせようと燃やされた燃料は何か?
おそらく「松」が多かったに違いない。量産に向き、着火性に長け、再生が早い樹種だ。
ついでに似た由来の地名を挙げておこう。
  まつやま まつえ えと みと みたじり
  まつおか まつがおか ひみ おおま
昔を知る事の意味は、今日と明日のためにあると考えたい。よって筆者は千年の古さ、権力の中央、武士と城下町などに重きを置かない。
以上で地名由来考の詠み終わりです。