泉流No.32 ガイア

* 阿蘇海  ガイアの女神の  遊園地
〔駄足〕国際連合は、第2次世界大戦後に人類の願いである戦争放棄による世界平和を実現する国際機関として活動を始めた。
弱肉強食の短絡ルールしか存在しない国際外交と武力行使を常識とする国際政治の舞台に、小規模であってもいいからとにかく非戦闘地域を設定しよう。
その数を着実に増やして行く事でもって紛争戦乱拡大の歯止めを構築しよう。
そんな構想でもって始められた運動の一つが、国連下部機関UNESCO=教育科学文化機関の運営する世界遺産の審査・認証・維持事業である。
世界遺産指定を観光資源ランキングの一種と誤解して、指定獲得運動に血道をあげる一部の地域と役人の多くは、基本を踏み違えてないだろうか?
さて、同じような発想で始まったジオパーク構想があった。日本ではUNESCOの支援を受ける推進団体GGNの下部ローカル組織であるJGNが1987年頃から活動を始めている。
この度の取材先である山陰海岸ジオパークは2008年12月JGNから言わば国内認定、ついで2010年10月にGGN認証=ワールド認定を受けた。しかもこの辺は、山陰国立公園地域だから重なる感じはする。
因みにジオパークなる言葉は、フォッサマグナミュージアム設立準備中の博物館学芸員が提唱したそうだから、和製国際語と呼ぶべきかもしれない。あえて、筆者が我流の解説用語化を買って出れば、地学的特異資産を備えた自然公園と言替え出来そうだ。
序でにいささか脱線だがフォッサマグナと言えば、新潟県糸魚川市。そこの姫川流域から産する翡翠である。ヒスイ産地は世界に3カ所しか無い。ヒスイの生成条件は現代の地層岩石学により解明されたらしい。
地下深くで生成される鉱物が人間の眼に触れる地表面に露頭する事は、極めて特異な地学事象である。本来地下にあって目にする事の無い地殻変動の証拠類が、地上に観察可能な地形としてもたらされる。希有な場所であり保存に価すると聞いた。
山陰海岸にも柱状節理や俵型溶岩など、火山活動に絡む稀少景観を見た。道の駅の展示コーナーには列島形成の経過を示す連続模式図があった。
かつて日本列島がユーラシア大陸の一部を形成していた約2千年前から始まり、現在の独立大陸附属島になるまでの経過が一覧できた。
山陰海岸ジオパークの指定区域は、丹後半島経ヶ岬<東の端、京都府>から但馬海岸<兵庫県>を経て白兎海岸<西の端、鳥取県>まで東西110キロ南北30キロもある。海岸から山頂までと多様なので、とても数日で見て回れる状況ではないようだ。
とにかく地球科学の珍しい光景が集積する特異な地域だから、リピーターになりそうだ。
さて、句の意。阿蘇海は丹後半島の付根付近の内懐にある内海、半島と列島本土と天橋立の3つの地峡に囲まれ宮津湾の最奥にある。
ガイアは、ギリシャ神話の女神。「地」を司る役割からして「ジオ」に最も縁が深い存在だ。
この海域半島は、既に触れたとおり美女にまつわる事績が多いので有名だ。今日紹介するニュフェースは、山椒大夫に穫り込められた安寿姫、天の橋立の松木に羽衣を掛けた天女、そして特産銘品・丹後縮緬を作り出すこの地の織子たちである。
ところで、阿蘇海はジオパークゾーンの外であるかもしれない、この国の行政の仕切りは理解しにくいのだが、一つの半島の半面である内海側はカラー・ゾーンニングされてないのが、いささか腑に落ちない。
今日はこれまでとします