サイト君 第54話

今日は引続き、サンク連合国の生活必需品関連産業でのみ使われる資本化しない通貨がテーマである。
前稿で世界経済の来し方を概観した。東インド会社400、産業資本主義250、銀行券の非兌換性40、と年数カウントはアバウトだが、どれも飽くなき金儲けを謀る悪あがきから派生した場当たりの政治経済態様だ。
自由貿易は現代の常識と化しつつあるが、果たして海の向こうに足元の陸上に住む大衆のための必需品があるとも思えない、そこに倫理観も道徳観念も法規遵守も科学的統理性もあるはずがなくアンフェアのみだ。
帆船を押立てて海を渡り、その地の王族を殺し民衆を奴隷にする。実態は暴力戦争なのだが、コロンブスパトロンである遠い本国には嘘の報告のみを送り続けた。インドは万物豊富で物が余っている、キリスト教徒になって喜んでいる、西洋文明の仲間に入れてうれしいと、コロンブスの卵からでた嘘に大義名聞はまったく無い。船乗りシンドバッドですらランプの煙とばかりに一夜にして消えた嘘とうすうす知りながら、なんと千夜も騙され続けた欧州人は、コロンブスの手下どもが運んで来る黄金と物資をひたすら貪った。
オリヤンタル・インドへの到達は欧州人の幻想でしかなく、奴隷収奪や暴力を押隠す植民地主義経済は、もはやリーズナブルな市民経済には当らない。それがコロンブスの卵の真相だ。とサイト君は語る。
当時も今も、海外貿易や長距離輸送にさしたる必然も当為も無い。現代経済の危うい繁栄は、珍しい異国・異文化の風俗と産物に群がる骨董趣味の貿易願望から始まったに過ぎないから極めて脆い。
その原点に思いを致し、不要品を買い求める通貨と生活必需品を手に入れるためのお金とは、別にあっても良いとサンクの人たちは考え、そのように制度設計をしたのだ。とサイト君は語った。
以上をもってサンク国における政治・経済・社会3界のうちの経済界は第43話から始めて54話を以て終り、明日から社会界を始める