サイト君 第46話

隣国メゲーヌ滞在が45年超になるサンク国民サイト君の、彼の故国の社会施策=政治・経済・社会の3界における権力の兼併を阻むべく設けた分界の壁とその経緯について語る第6稿である。前稿で紹介した経済金儲け論に対するサンク国の対応措置の続きである。
第1=金儲けで得た経済的利得の個人帰属をどうする
第2=全構成員の生存をどう保障する
第3=1と2は相互背反の関係にあり両立はあり得な
   いが、政治的調整をどうしたか
これは、人類の歴史において一度も実現を見たことがなく、社会科学上最究極の解決困難な課題である。
それは、細菌と医学のせめぎ合いに似て決定策が無い。施策があればその盲点を捜し出し、抜駆けの利得を得ようと図る人物が必ず現れる。社会科学的病理だ。
そんな利得は、非合法ボーダー・ビジネス類似のダーティーな金儲けだが、その全てを永久阻止することもまた難しいのである。このように個人的利益を累積・総和しても則ち全体益にはならない。これが経済学の合成の誤謬則である。
サンク国は経済活動領域における第1と第2の対象範囲とをそれぞれ明確に区分する施策を採用した。
第2の経済活動領域とは、国民の食・衣・住に直結する農林漁業や鉱山業などの第1次産業だ。この産業分野の製品を入手・交換取得に当って使用する貨幣の資本転化を不可能とする扱いを決めた。
次に第1の経済活動領域だが、これは第2の特定業種を除く全ての産業分野だ。ここで使われる貨幣の基本的性格は、メゲーヌ国の紙幣と全く同じである。
つまり第1と第2では、取引交換手段が異なるのだ。
一つの国に2種類の貨幣、一つのゾーンに大きく性格の異なる2タイプの物資が流通することとなった。
一見 前代未聞の事象が出現した。
明日に続きます