サイト君 第44話

サイト君は、彼の故国であるサンク国が採用した社会領域での運用成功例について話をしてきたが、今日はその第4稿である。
所謂成功とは、政治・経済・社会の3界をはっきりと概念区分することから始め、互いの分界の間に権限の兼併を封ずる壁を構築したことである。
壁は特定個人や同じ顔ぶれの縁故集団が、3界を横断的・排他的に長期独占支配する事態を阻止した。
その結果、サンク国では隣国メゲーヌより各段に理想的な民主的コミューンが形成されたと言う。
これまでに彼が語った、政治と経済の重なりについての論点は、やや判りにくい内容であったが、民主主義が実現した歴史を持つ西洋世界には、公と私、公と官、の間がどう異なるかの認識はあること、メゲーヌを含めた東洋世界にはその歴史体験がなく、認識区分が曖昧模糊としていること、の違いは漠然と判った。
サイト君は政治界のありようを既に述べ、経済界について説明途上だが、今日は経済に関する第3の見解について彼が述べた内容を紹介する。
それは経済なんて単なる金儲けと考える立場である。しかもそう考える人が圧倒的多数であるとも言う。
経済行為とは他人の助けを借りずに個人が生きる分野=究極の”私”分野だから、金儲けと解するもよい。
個人の暮らし方、糧の稼ぎ方にまで、国は干渉しない。だが、他に対する個人の経済的優位、その優位がもたらす隔差の固定、更なる利権化を阻止するようにサンク国の政治は運用された。つまり天賦の経済財を私的所有権の対象から除外するべく、サンク憲法は土地の所有権が国にのみ帰属することとした。
これが政治と経済を分界する考え方が招いた一つの効能であったと彼は言う。
明日も経済界金儲け論の続きを紹介します。