サイト君 第36話

子どもはいつの世もどこの世界でも、宝であることに違いはない。
そこに生きものの仕組に備わる無限の未来があるからであろう。
45年前にサンクからメゲーヌにやって来て、長期滞在を続けるサイト君は、この点の不安が大きくなりつつあると言う。
かつて<明治11年>のメゲーヌは、子どもを大事にのびのびと育てていたが、果たして今日只今はどうであろうか?
130年くらいで子供の扱いが急変したのだろうか?
昔の子供を発見・記録したのは、英国の女流探検家イザベラ・バード<I.L.Bird 1831〜1904 日本奥地紀行=邦訳多数>である。ユーラシア大陸の西の端にはみ出た島から、最も遠い同じ大陸の反対側=東の端にはみ出た島に1878年単身で来て、陸地移動の方法で北海道まで旅行<出版は英国で1880>した。探検文学盛んな英国でも女のパイオニア冒険家は稀な存在であろう。
さて、本題に戻る。サイト君の不安とは、バードの見た子ども風景が、百数十年後の今日失われたことである。
景観の中から子どもが消えてしまっている。
たまに見かける子どもは、その多くがメガネをかけて大冊のマンガ本にささるか、さもなくばケータイ電話らしい機械に熱中している。それはケータイではなくゲーム機だと後で判った。
メゲーヌでは子供特有の眼の光が失われてしまった。
何故そうなったかの背景を明日考えます。