サイト君 第29話

近頃サイト君が話す故国サンクの話題は、群団処遇編ばかりが続いた。それは内容が新鮮で興味深く、ワイドだったのだが、、、社会科学系のやや実相の見えにくい語りばかりでは、いささか肩が凝る。
ここらへんで、サイト君が自宅に送ったメゲーヌ国滞在体験報告書簡から一部を紹介してみよう。
45年前彼はほとんど何も持たずにやって来た。今では、ごく普通に人並みの物を持っているから、この長い間に様々な生活物資を買い集めて来たようだ。
彼なりに満足しているのであろうと、インタビュウしたみた。
あに図らんや、満足度は結論を急ぐとブーであった。まさに屁の音である。
夏暑く、冬寒い、これは当たり前のことだが、汗かきで寒がりやのサイト君には、これが一番こたえたらしい。
下宿の小母さんに、こてんぱんにやっつけられたとか。
いつまで貧乏たらしく着た切り雀をやるつもりか?と迫られたのだとか、、、
彼は、”着た切り雀”の意味はもちろんのこと、どう受答えしてよいのか判らず、その晩はホウホウのていで退散するばかりであったようだ。
翌日勤務先で同僚に話し、対応策を伝授されてから、準備よろしく帰宅した。ところが、小母さんは強力かつ強引で下宿には既にして仕立屋が鎮座しており、夕食もそこそこに採寸されたので食べた気は全くしなかったとか、、、
冬は冬服、夏は夏服、他にあい服。
サイト君は、メゲーヌに四季があるとは贅沢の極みと言うのである。
今日はこれまでとします