サイト君 第28話

昨日に続きサンク国での群団処遇編の第4稿である。
サンクは、隣国メゲーヌにおける会社の持つ影響力の強さについて全面的懸念を抱いている、今のメゲーヌでは会社はその経済活動が極大化し経済の領域を超え、政治の領域・社会の領域にまで悪影響を及ぼす状態になって既に久しい。
基本的人権が侵害され、機会の均等が失われ、フェア・スピリットが衰えて、社会が悶絶死せんとする危機にある。
メゲーヌは会社のオーヴァープレゼンスによりコミュニティー本来の役割である地域連帯・相互扶助の伝統を骨抜きにされ地域の崩壊・社会の形骸化が著しい状況にある。しかもメゲーヌにはそれを自発的に回避する気運すら見られない。
サンクはそうであってはならない。
以上がサンク市民が共通に抱くコンセンサスである。
よって、サンク憲法は法人の全領域を国民の監視下に置くようにした。今日はその法規制のうち、特に目新しい具体例をサイト君が選んで紹介する。
1=会社はサンク憲法遵守をその行動理念に掲げなければならない。具体的には執行役員の中にCCO*=合法活動管理担任重役を置いて、事業内容の公開と市民による監視活動へのリスポンスを責務としている。
CCOは、先の稿で述べた短期任期・公募制による職員採用の開放=人材流動化の施策と相まって効果を発しており、反社会的・非合法活動を隠れて実施する風潮が根絶した。
内部告発など価値基準がどこにあるか疑念を持たせるコトバは、サンクでは既に死語となってしまった。
2=企業活動における対社会責任能力が強化された。具体的には、持株会社の禁止、法人による株式保有の禁止、会社役員の事業専念を義務化<一切の兼任・兼職を原則禁止、特例措置は個別・事前・申請主義により公共の場で審議し決裁する>、他業従事・事業多角化の禁止<事業対象を一業種に限ること>、企業秘密主義の排除<工業所有権制度に立つ排他性や経済的優位性が原則的に認められないことは先の稿で触れた>などだ。
特に製造物ならびにサービス提供に係る事業主の責任に関しては、著しい改善を見た。
これを管轄する行政府であったが機能を果さない消費庁を廃止し、代わりに会社が業種ごとに結集する同業組合を設けた。これに製造物責任の履行義務を負わせ、共同して解決に当らせることとした。
この組合は、同業種会社が集まって共同負担と自主管理をもって情報公開と対社会責任を保障する組織だが、その運営は社会横断的に行われるように設計された。執行役員は異なる3分野から選任されるルールで、市民ならびに製造物・サービスのユーザー側に身を置く者の代表、会社労働者の代表、会社の代表の3区分で構成されバランスが図られ、もって社会適合を果している。
*注=CCOの2番目のC1文字が competency & constitutionalityに当る、訳語に法的適格性、合法的など
紙数が尽きるのでこの稿の筆を置くが、再論要約する。経済活動全般を広く市民の監視の下に置き、政治や社会の領域を歪めないようにその行過ぎを牽制する仕組が必要なのだ。