サイト君 第15話

この数日サイト君は、パラダイムの話題ばかりだったが、実はそれは彼の故国”サンク国”を語るための布石であった。
現代の主要国が産業経済社会であり、まずまずの豊かさやそこそこの民主・平等を実現した。だが、その前提となったパラダイムは、産業革命の勃興期には輝いていたが、労働者は250年もの間奴隷並の扱いを一貫して受けてきた。
そして政治・経済・社会の3本柱のうち経済のみが、ガリバーになってしまい、互いのバランスが崩れ、歪んだ構造が固定している。
人間が”人”らしく振舞うためには、このパラダイムを手直しする必要があると、サンクの人たちは考えかつ行動した。
サンクの憲法は、メゲーヌ国を他山の石にして作られていること、職業選択の自由は45歳未満の市民には適用されないと=第4話で紹介したが、それこそパラダイム見直しの一例だ。
メゲーヌ国では若い時に就いた一つの仕事を、多くの人がその後ほぼ一生かけて従事し続け転職しない。エスカレーター人生だ。専業による分業労働は、『○○ダケやらされる』『××シカ知らない』=ダケシカ人間?狭い視野の偏った人格とコンピュータ・ストレスを抱える困った人間を大量に育てる。
サンクではそこを改めるために職業選択の自由基本的人権に年齢による制限を設けた。
若者の生活を金銭面で保障しつつ、雇用の機会均等・万民開放を徹底励行させる措置だ。
その結果、政治・経済・社会の3本柱がバランス良く維持されている。あらゆる場面からメゲーヌ特有のタコツボ事象が消えた。
だから、サンクに裁判員制度は存在しない。特定の職業に係る固有の知識・ノウハウは存在するが、短任期就任制により多数の人が経験し保有することでオープン化され、特定官僚集団が囲い込むシークレット情報ではないのだ。
サンクでは働らく者は囲われた奴隷ではない。
今日はこれまでとします