泉流No.19 揺れに漏れ

* 揺れに漏れ  桜咲けども  花見なし
〔駄足〕メディアは東京地区の開花を報じたが、同じ日に原子力発電所に関して更なる事態悪化の報が知らされ、花見の気分はすっかり萎えてしまった。
格別説明を要しないのだが、性格なので述べておく、揺れは、地面と海面。漏れは核分裂派生物のことである。
放射線監視区域外から生命体を速やかに死に至らしめるレベルの高い放射能が検知されたことは、原子炉が既に破壊されてしまっていることを示す。これは,素人の眼にも明らかな、不幸な事態の出来である。
もはや、復旧の見込は消えたのであり、放棄しバリアー構築へと直ちに路線転換するべき時期が到来した。
ただ、発電所の形式上の所有者である電力会社が1・2・3号機を放棄の対象とするか、それとも1〜4号機を一括して放棄対象とするかの意思決定如何にかかっている。
原子核分裂事故としては、スリーマイルとチェルノブイリとのほぼ中間に位置する深刻さだが、列島人には、ヒロシマナガサキ・フクシマと3つ並ぶ世界的知名度の高い地域が出現した悲しさを味わわされる。
ボウ国(フランス語の美しいに当ることば、世界の警察官を任ずる軍事大国のことを漢字で表記した場合に使われる文字に因む)からの3つ目のそして無条件降伏がもたらしたビッグ・プレゼント?であるように思えない事もない。
〔駄足の蛇足〕
1、1カ所の発電所一式の蹉跌で、世界有数規模の系統電力会社が休眠化に至るなど、世界の実業経済の歴史の中でも前代未聞の珍しい出来事である。
創業以来100年以上も経過する事業者が、死命を賭けるような大型投資はしないものである。
これを水力や火力による発電方式に当て嵌めて
考察してみよう、僅か1カ所の発電所の事故で全体に破綻が及ぶなど通常はありえない。
そのあり得ない事態が起りつつある、原子力方式の持つ原罪性・悪魔性の意味がよく判って頂けるのではないだろうか?
資本主義経済始まって以来の大型破綻となるが、これに資金提供した銀行団もまた一蓮托生の運命を辿るであろう、それがこの経済機構の仕組なのだ。
プロジェクト金融とはそのようなものである。
2、地震津波発生以来の珍事がもう一つある。外国為替相場における円高現象である。
空前の規模の被害が起ると、被害国は復旧のための物資を海外から大量に購入する,その場合保有外貨が豊富であれば取崩して外貨で決済するか、相手が承諾すれば邦貨で支払うことになる。
災害復旧が進んで生産再開するまで対外輸出が落込み,外貨獲得力が下がるシナリオしかない。それに日銀の通貨発行量は急ピッチで増大している。
どれをとっても、円安要因しかないはずなのだが?
金融マフィアの頭の中は、とんと判らない。
3、人類の長年の天文観測の成果である物理学の知識の結集がもたらした地上の人造太陽は、やはりパンドラの箱であった。
太陽の放出物,光線・気体・液体・固体、いずれも人間の叡智ではコントロール出来ない。
生命体に対する破壊力を削ぎかつやわらげる方法もまた無い。
近過去に「if」はないが、
もしアインシュタインユダヤでなかったら、そしてナチが政権を奪取しなかったら、
更にドイツが民族浄化策を実施しなかったら、
パンドラの箱は、作られる事なく単なる科学上の知識として頭の中でのみ全てが終始したことであろう