サイト君 第9話

足元の国へは言わば出稼ぎに来ているサイト君だが、故国の”サンク国”へは、よく帰省するし、その気になれば、容易に通勤することも出来るらしい。
と言っても、読者の諸君は、もうお忘れだろうが、初稿で述べたように、”サンク国”の所在地は、北緯40°東経135°にあるのだ。もっと判りやすく言うと秋田県男鹿半島にある入道崎燈台からほぼ真西400km、つまり海中となる。
その位置には、世界のどの地球儀や地図を取寄せてみても島も陸地のかけらもないのだ。
そこでサイト君にインタビュー?
答は例によってコンニャク問答だが、まあなるべくかいつまんで列挙しておくことにする。
陸地がないから住めない。それは人類の経験知として正しいが、絶対的確定知ではない。科学上の知見はすべて部分知でしかないのだから
次に移動における空間と時間の関係だが、空間の歪みをうまく利用できればワープに消費する時間は経験時間における一瞬に限りなく近い
などと、スチルス性*を備えた居住空間の存在の可能性からウルトマラン・スワッチュの3分間往復の夢物語を真顔で説明するのだった。
やれやれと言ういつもの顔をすると、ニヤリと笑って言い放った。
下手に陸地があるからボウ国の黒船ペルリや丹前ハリスに狙われ、石油を押しつけられたり、原子力発電の商業運用実験まで強要される。
”サンク国”は、いつもメゲーヌ国を教訓にして、国のあり方を柔軟に変えて来たんだよ。
*注=英語のstylus(レコードの音溝カッター針、レコード再生針、ロウ版ガリキリ尖筆、手書入力用タッチペン)ではなく、軍用飛行機の
特殊塗装が有する不思議な効果を意味する。
現状レーダー補足されない性質のことだが、その技術の延長として可視光でも補足できない透明性に進化する未来を暗示したもの
今日はこれまでとします