泉流No.5 やまどり

* 雪の原  黒いやまどり  進みゆく
〔駄足〕 この冬は、とにかく寒い。加賀平野は概ね白い状態が続いている、近年では珍しい景観だ。所謂根雪と言う状態である。
異常気象と片付けるのは、メディア一流の単元化手法であって、愚民受けを狙った拙速ことばだ。寒い暑いをマイナスサイドと決めつけた、ネイミング作法であって、科学的背景が全く乏しい底の浅さが何とも危うい。
40〜50年前の冬は、今年程度の根雪状態が当たり前であったのだ。ただ、当時は現在のようなワールドワイドの映像報道体制が無かったことや、宇宙開発前夜で気象衛星による大気観測データ取得やリモートセンシングなどの可視化手段が無かったから、北極振動の挙動特性の把握がなされていなかった。
寒波が、数日から週・旬日の間を置いて、モンゴルからヨーロッパ・北米、会津や山陰へと周期的に移動してゆくことが、21世紀の今日では茶の間にいて理解できる。
ラニーニャアリューシャン気団との関係も、大気が全地球規模で熱交換するシステムであることを考えれば、説得される。
日本列島が中国大陸の風下にあり、ヒマラヤ山系から北太平洋に向う大気廻廊の真下に位置すること。
全地球規模の大気循環が、人類共通の知識となって、未だ半世紀を経ていない以上、異常気象の一語で片付けるのは、拙速早計のそしりを免れないこと。
さて、句の意だが、先日ある大学の図書館の中にいて、漠然と室外を観ていた時の状景だ。真っ白い雪原の中を黒いヤマドリが進んでいるのを見た。目立ってしょうがないはずだが、堂々悠然たる歩みであった。そして、老人の常で注意集中は持続しないから、間もなく見失った。
雪の原を見ながら、頭は別の事を思っていたのだ。ヴェジタブル・ガーデナーとして全く機能停止していること、最後に積雪に覆われた畑を見回ってからもう間もなく1ヶ月だなあ、、、
この間、もう何回も家の周囲の除雪をやった。
この時期の暮らしは、雪降りの有無、その多少如何に左右されるばかりだ。
除雪作業だけなら、小一時間くらいの肉体労働だが、下着は全取替になる。伝説化したサンパチ豪雪レベルになれば別だが、当面気楽な借家暮らしなので,除雪作業での転落懸念はない。
でも、雪の十分ある季節は、草臥れる。
道路は狭くなるので、車での移動にかかる所要時間は、無雪期のほぼ倍くらいと見ていた方がよい。歩道は除雪機能を備えていないから、歩行者も自転車も車道を共用する。
当然にスピードを抑えつつ走るも、気疲れが酷い。
それに交通量が数倍になる、これもまた、雪国の住人にとっては常識だが、そうでない人のために一言。
つまり、枝道の機械除雪が手薄もしくはアト廻しになるから、主要幹道に交通量が集中し本来の渋滞が視覚化されるのである。
あれやこれやで、雪の日の眠りは良くない。日頃肉体を酷使しないものが、慣れないことをすると、腕から肩がこわばり、首が固まって寝付けない。これも老人力なのだろうか?