深解広説俗流事典No.1の3

*No.1の3  しかくしめん の続々編
四角四面、このありふれた形は、農地や建物など、その内部空間でワークする環境と考えた場合、合理性において正六角形に劣ると前稿で述べた。
それは単にカタチの考察でなく、その中で働らく人やトラクター作業などの総合的効率を考えて導き出される結論であると、これもまた前稿で触れた。
もちろん、四角形にも形としての合理性はある、その合理性の故に世界中どこにでも見られるまで普及し、ありふれるカタチへと到達しのだ。
だが果たして人類は、出来上がってしまったこの慣れ親しんだ四角形を捨てて、いつの日か正六角形に組換えることがあるだろうか?
その可能性について、農地と建物とで別々に考察してみよう。
まず農地だが、その前に農地が四角になった経緯を考察しよう。
農業なるもの、つまり人類史における食糧生産の始まりは、地球史上最後の氷河期終結以後だから、最大に遡っても1万3千年よりこっち、概ね8千年前後であろう。
当然の事ながら、何を作物とするかによって農耕地条件は異なるし、栽培適性や地表の形状による制約もあるから、すべて一律四角形にはならない。
よく知られるフィリピンの棚田のように、山腹の急斜面を天に至るまで耕やす例では、そもそも四角が成立たない。
農業生産で四角形が追求される背景は、ナイル河流域のようなほぼ平坦で広大な地形が前提となる。同時にそこでの特殊事情が、四角形誕生の契機になった。
よく知られたことだがナイル河では、毎年定期的に洪水が起き、土地の権利問題が租税負担の問題と直結するが故に、測量技術の進化を要請し、社会構成員が公知の事実として、耕地の再配分なり権利の復元が行われた。
その高度な社会的要請に応える数学上の大発見があった。
ピタゴラスの定理である。
では、自然界と直線はどうだったろうか?
極めて稀であり、決してありふれた存在ではない。
雲間から漏れる太陽光線、錘りを着けて垂らされた糸の線、ひもを強く引張った状態などは、経験的に直線である。
因みに、四角形は自然界に存在しないと断言できよう。
一本の紐に、3:4:5の長さの目盛りをつけ、その目盛りを角として三角形を作る。
ピタゴラスの提唱は、直角三角形ができることに最も大きな価値がある。
そして、四角形を作り出す一つのステップでもある。
直角を形成することが容易になったことで、始めて四角形が地上にありふれるカタチになった。
土地配分の基本形は、この時点で四角形を理想とし、間もなくそれ以外の形を考えることをやめたことで、四角形は究極の形に到達した。
到達した公準は、急速に全地球に広がった。
灌漑用水は、直角をベースにした測量技術を応用する事で更なる農耕地拡大を招き新世界を拓いた。
直方体の地型は、当然ながら相似形比例により容易に計算ができる便利さもある。
以上が四角形および、その一つの理想型である直方体の持つ、形としての合理性の要約である。
次に、農業生産において経済合理性の認識はいつから始まったのだろうか?
人類史において生産効率を考察するようになったのは、果たしていつからであろうか?
天候に左右されやすく原始性の高い産業である農業では、現在只今もあまり重きを置かれてないように思う。
せいぜい投下労働時間に対する収穫量の割合として収量効率が認識される程度ではなかろうか?
ラクターの出現は産業革命以後の事だから、最大に遡っても200年前くらいだ。
ラクター導入時に、とうに農地の形は決っていた。
その後、トラクターの運用に適した耕地のカタチにしようとする見直しの動きはなかったようである。
では、これから先はどうか。
困難度が高いとも言えるが、実現後のトータルメリットは極めて大きい。
しかも見渡す限りの広さつまり一団の耕地全体を短い時間で一度に組替えしなければ、効果が乏しいようだ。
派生的に懸念されるトラブルもあるかもしれない。
想いつくのはまずアクセス道路の運用面だ、つまりそこを通過する圏外ドライヴァーが見馴れない交差点に出逢ってまごつく事態だ。
トラブルと言うほどのこともない、慣れてしまえば、従来の常識である直角交差点よりも通過はスムーズである。
その理由は実に簡単だが、①すべて三叉路交差となる②コーナー角度は120度である③右折禁止を一律に導入できる④以上から信号機による進入規制は不要となり、全体の移動性(安全向上かつ短時間通過)が大幅に改善されるメリットがある。
なお、主題である内部空間でのワークメリットは既に前稿で述べたから再論しない。
ただ、正六角形農地の場合、一団の耕地全体を一つの地型にしなければ総合メリットは発揮されない。
この合同地形を貫く必要があることは一面制約であり、面積の多様性を欠く点でデメリットであるかもしれない、この点で四角形に備わる相似メリットが正六角形には欠けているようだ。
次いで、建物における四角形に替えて正六角形を導入する可能性を考えてみよう。
農地のような総合メリット性のフィードバックがない分だけ、導入は容易である。思いたち次第、実現する。
住居内における動線の短縮メリットなどが考えられる。内部容積に対する外壁表面積の比率も極小となるため、建設コスト・メリットもある。
最後に、普遍性命題らしきものを示唆しておきます。
図形の内角の総和の大きさに比例して内部空間のワークメリットも大きくなると一般化しておきましょう。
三角形は180度、<正>四角形は360度、<正>六角形
は720度・・・・ここでとめます、
かつて人類は四角形を至高の到達点と考えて,その後の追求を取りやめたのでした。その智慧を借用して本稿も次のワンステップである6までと致しましょう。
これをもって第一稿しかくしめんを終ります