耄想陸行録 第13稿

* 目が覚めた  これはブンーカだ  ミンときた
〔自註〕大陸3週間の旅は、インチョンから入ってまた還った。黄河の流域をその支流も含めて往きつ戻りつしたが、未だに止揚・要約が出来ないで右往左往している。
国境観を持ちえず足の裏から毛髪の先端まで、拙速主義教育の中で育ち、出来の悪い筆者にとって、時空軸が常動不定の大陸を1ヶ月ちょっとの期間で、掴み取ろうとする目論見が、そもそも間違っているのかもしれない。
さて、句の意は実に簡単である。
夜寝ていて、突然に目が覚めた、寝付きも寝起きも変動が激しいので、一々詮索しない。すぐまた眠りにつこうとしたら、耳元にブーンと来た、蚊である。これにはたまらない、虫さされに弱い方である。日頃から対策は、十分に考えてあり、手持ち資産は備わっている。でも起き上がるのは厄介だ、あれこれ考量していると、既に食われていてやたらにかゆくなってきた。その上今度もまた耳元にミーンと来た。眠いどころではない、半狂乱になるのが実態で、虫さされに弱いなどと恰好つけるレベルではない。最弱というべきだ。
起き出して、時計を見た。寝る前にセットした蚊取り線香は、とうに消えていた。100円ショップで購入した携帯専用は、半日持てばよいほうで、夜通し燃え続けるには小さ過ぎたようだ。かゆみ対策に常時携行の食塩を擦り込んだ。
再度就寝にトライする時間ではある、防備策を考えた。全身をカバーするにはどうしたらよいか?夏だし、強力一辺倒のエアコンを点けたまま眠ることはしないほうだ。そうだ、寝袋で全身を包む要領を思いつく、塩梅よいことに、掛け布団のカバーは、封筒上になっている、早速はがして潜り込む。
でも首から上はどうするか?鉄仮面の持ち合わせは無い、顔だけぼこぼこに食われるかも、、、
持参のネットを取り出し、被る。朝までよく眠ったのであった。
持参のネットと、句の中の「ミン」とは因縁がある。
先年、アイスランドのミーバトンまたはミンバトンの農民手づくりショップで購入した逸品だ。頭から被って首まで護れる。養蜂業者が着用するあの手のものだ。因みに、バトンはアイスランド語の湖に当り、ミーかミンは、ユスリ蚊のこと。かの湖は、ある時期一斉に産卵・孵化することで有名で、一時期の必需品として置いてあったもので、そもそも観光客向けのショップは成立ちそうにない土地柄だ。
アイスランドは、北極圏に近い国土で養蜂には全く向かない土地柄だ。ワットも、火山性間欠泉と氷河が狙いで渡った。狙って外れたのは氷河で、狙わずして転がり込んだのが、オウロラと地熱発電であった。
もちろん、ギャオはしっかり覗き込んできた。
ギャオとは何ぞや?
興味のある方は少しお付合い頂きたい。
ブンーカとは、広辞苑によれば、文徳をもって民を教化することだそうだ。だが、その力をもってしても免れえないのが、地震ではないだろうか?
ギャオと地震との関係を少し考えてみる。
地震の発生原因は、大きく4つ程あって、日本に最も多い地震はプレート境界型であるらしい。
アイスランドのギャオとは、プレートの生まれ出る溝<穴の連なり>のことだ。
生まれでるプレートの名は、それぞれユーラシアPと北米Pと言う、互いに180度正反対の方向に広がって行く。地球は丸いから生まれた2つのプレートはまたどこかで出逢うことになる。因みに同事に生まれたものが出逢うかどうかは不明だが、仮に出逢うとしたらその出逢いは数千万年後であろうが、、、プレート自体はいつも出逢い面で押合い、時々地震を起こす。
先に最多発型の海溝型地震を述べておこう。
これは、一方のプレートの下に、もう1枚のプレートが沈み込む過程で生じるタイプで、太平洋側三陸沖がそのタイプの銀座である。
ここから本題である名称未定のギャオ原産地震について触れよう。
ところで読者の皆様は、8月中旬に報道された「日本海歪み集中帯」なる地学用語を覚えておられようか?日本海の東縁、具体的には新潟県から兵庫県とを結ぶ範囲をさすが、実はこのゾーンが、アイスランドギャオ産プレートの終着地点らしい。ただ、ここで出逢った2枚の大プレートの2つの端が、どう折合いをつけているのかが、依然よく判っておらず、佐渡立山連峰能登半島〜淡路までの範囲が、褶曲山脈を形成している可能性がある。
遠い将来、ヨーロッパアルプスやヒマラヤのようなスケールになれば、やっぱりそうだったんだとなるかも知れないし、そうならないかも知れない、、、
ただ、このゾーンの中に糸魚川翡翠産地があることを指摘しておきたい。今のところ天然翡翠の産出地は地球上僅か3カ所のみ知られているそうだ。
それほど珍しい地理上の特異地が「日本海歪み集中帯」に含まれることに格別の意味がありそうな気がする。
さて、心ならずも蚊に食われたホテルの所在地は、平遥<ピンヤオ。山西省省都太原から車で半日行程>だ。1997年世界遺産登録後に知られる存在になる、眠ったような街である。
明<これがまた”ミン”なんです>初に建設された城郭が、よく保存された状態で残っている古城都市だ。
城好きな列島人は、設計思想において何を守ろうとしているかの民族差?地域差について、深く考えるきっかけにして欲しいもの。
<脚注>  筆者の独断による備忘録
明=王朝名、1368〜1644。先行”元”を討伐した朱元璋(太祖)が建国した。建国初代の朱元璋<1328〜98。洪武帝とも>は最貧農民層孤児の出自とか、秀吉と重なる大出世。なお、平遥城内に博物館がある。
今日はこれまでとします。