耄想陸行録ーNo.6

* バス、パーパー  物売りピャーピャー  蓋が欲しい
〔自註〕始めに断わりです。本稿は、No.4&5の続きです。ただ、食事間近の敏感な読者に配慮して、エイリアン発見テーマはこれで終わりにしたいと思います。旅の恥は何とかなる不穏当な話柄はさておき、旅での失敗話は如何なものか?と思わないわけでもないので、、、
前稿では、急性大腸性カタルであると、自己診断に至った経緯をごく簡略に述べたわけですが、ラフでアバウトなワットは、都合の悪い記憶は残らない性向がある。他方、別人格ゲイリーは、心因性のダメージをもろに受止めて消化器系を一挙にサボタージュさせる精神的脆さを備えていたとは、この旅で始めて発見した。
精神的ダメージとなったであろうものを定型詩に投げ込んでみた。
蓋が欲しいのは、筆者の耳にである。
五感のうちで、耳と鼻はどうして蓋が無いのか?
不思議だ、神様の設計間違いか?
幸い帰国から2週間程経過、ゲイリーの暴走は収まっている、原因はやはりこの辺にあったようだ。
帰国後老人に相応しい、さわやかな?朝と静かな日々がが舞い戻り、刺激の少ない粗食に立返り、ゲイリーのトラウマは淡々と薄れつつあるようだ。
それにしても、耳は、またなんと脳髄に近いことか?
高速バスは、路線が違っても、ドライヴァーが代わっても、金太郎飴のごとく変わることなく、一台追越すごとに、容赦なくクラクションを「パーパー」と浴びせかける。
1日8時間も、過度に音圧の高い騒音環境、異常に効きのよ過ぎる?冷房環境。
捕われの身のゲイリーは、ひ弱にも変調を来し拒否反応を呈したのであった。
バスに関しては、紙数の必要が無限大となりそうなので、別の機会に譲ることにして、ここで要約する。
バス事業は彼等のコトバで「客運」だが、名のみ”客”人で、意識において物を運んでいる。連続8時間も走行しながら1回だけ15分しか停車しない、それは間違いなくドライヴァーも、もの言わぬ乗客もともに”モノ”化していることの反映だ。
物売りピャーピャーとは、後でコトバの出来る方に尋ねたら、これまた過度の聞き違いであることが判明した。
物売りは自転車に乗り、ミネラルボトルを片手に持って、勢いよく振回しながら、徒歩の旅行者に向って、ピャーピャー怒鳴る。ものの20分くらいの移動の間に、何度かすれ違った。
この型の物売りは他に見かけなかったから、もぐり商いか?独創による独占販売か?
大陸の夏は、黄砂のせいか太陽こそ見えず、晴なのか曇りなのか決めがたいが、とても暑い。熱中症予防のためにも、タイムリーな水分補給は必要だ。
だが、マーケティングとしては、方向違いではないか?と感じた。大汗をかきながら自転車を漕ぎ、怒鳴り廻る中年オバタリアンから、十二分に振回されて泡立ち、手の暑さで加熱された飲み物を、果たして買う気になるだろうか?
ワットもゲイリーもげんなりながらNOだ。
遠目に見える、あの涼しい色のパラソルは、何だろう?物売りの店かな?冷凍ボックスにピチギャルかあ、涼しそうだよ。冷たいビール、アイスクリームのどっちにしようかな?
やれやれ着いたぞ、どれパラソルがつくる日陰の下に入ろうか、冷たいものを手にして立ち話をしながら、道のほとりの川面を眺める。
とまあ、これは急性熱中症でうなされた目蓋の中の幻想情景だが、こう言う情景で推移したら投下した元手はまずまずの利を生みそうだ、、、、
自転車の中年女性は、独占環境と折角の努力にもかかわらず、事業順調には見えなかった。
因みに、ピャーピャーと受けとめてしまった売り声を当用漢字で書くとしたら、「要不要」なるんだと、発声になぞって機関銃のように連発記述すると、「不要不要・・・」だ。それじゃあ、売れないわなあ???
今日はこれまでとします