耄想陸行録ーNo.5

* ドクターよ  ため息だけじゃあ  稼ぎ過ぎ
〔自註〕何はさておき、まずお断りですが、本稿はNo.4エイリアン発見編の続編であることをお忘れなく。
西安事件の翌週、ワット達は済南に4泊もしました。
当初の計画では、かの名高い列島国営鉄道の子会社?にあたる名門旅行代理店ジェーエーテービー社の海外パック旅行プラン同様に、毎夜のごとく宿が変わる予定でした。しかし、エイリアン=ゲイリー・シャージャーが再び存在感を示し始めたのです。一つの小さい宇宙に複数の人格が併存する事態は、現実に対処せざるを得ない実にシャープな課題であって、ラフ・アバウトな60年超の半生を、根底から揺るがすものとなりました。過年犯罪心理学方面で多重人格の発見があったようだが、この7月から我が身内の事態となったことを知りました。
済南<脚注参照>において、ゲイリーがワットを凌ぐ、所謂「下克上」の様相が再発したのです。
60年超の半生をワット単調人格による「上克下」のみで暮らした関係からして、そんなに簡単に切替ができよう筈もありません。
ここでいささか解説調モードで脱線しますが、上とか下とかは、ベルトの線(No.4稿参照)を基点としてのことであって、社会経済史学の同一用語とは無関係です。また、単調人格とは多重人格に対する表現語であって、音楽の短調長調とこんがることが無いようにしてください。
最初、我身の消化器系統に重大な変調を来したと想い、専門の医師に診てもらおうと思いました。
ここからは、大陸医療事情ならびに海外医療保険の覗き見報告となりますが、あくまでも個別事例の紹介に過ぎません、決して一般敷衍化しない注意が必要です。
ワットは、健康管理は一身上の緊急やむを得ない場合の駆込み寺であるとしか考えておりません。
それはしかし、一患者としての理解であって、向こう側つまり受入れする医療機関サイドの考えとは、相当に異なるように思えますが、格別そのことに詳しくなる必要も認めないので、あまり深入りしません。ただ、この春頃USAにおいて、オバマが公約に掲げて七転八倒し、紆余曲折の後に、当初の構想とは似ても似つかぬスキームに変わり果てて成立した
経緯を遠望すると、列島において早く実現した国民皆保険制度がもたらした社会現象を他山の石つまり回避すべき歪みとして教訓的に受止めたことの反映と思えるからです。
本来福利事業である筈の医療が、行政官を巻込み財政支出の大きな一画を占める一大産業に展開するのは、たかだかこの列島におけるこの僅か30年の近過去のことでしかないと言う原点を想起するべきであります。薬学部の6年履修制移行や看護学部の創設などが、医療の産業化を画する目玉施策と言えるでしょう。
ではその修学費用は、最終的に誰が賄うか?
答はか簡単、廻り回って国民が負担するのです。そのようなお手盛り安易なシステム、つまり医療産業システムから、所謂「赤髭センセー」は生まれない事でしょう。賢いUSA主権者大衆は、軍産複合体の二番煎じとしてのドクター官僚複合体による医療産業のマフィア化を回避したいとの意思を明確に示したのだと言えるでしょう。
真の医療先進レベルとは、患者の苦痛を軽減することの一点をもって論じられるべきであって、国民総支出GNE>の多寡や伸び率をもって論じるべきではありません。「赤髭センセー」の関心もまた、前者にのみあって、後者の事や長者番付ランクなどには無関心な事でしょう、、、
さて、海外では急に思い立って、フラリと医者に会いに行くことは出来ません。まず第1に保険会社に対してひたすら低姿勢でお願いする必要があるのです。
世の人が言うでしょう、「地獄の沙汰もカネ次第、ましてこの世は、、、」
生命にかかわる医療も、まずカネを握るヒトとの関係を構築した後に、行動に移る必要があるのです。
そうそう、國によっては、救急車の利用料が最高額で、霊柩車の数倍だとか、、、、その点、タクシー代わりと誤解している大坂や北海道との落差を知るべきです。なお、関心をお持ちの方は、近刊だそうですが、「ブラック・トライアングル」をお読み下さい。

ブラック・トライアングル―温存された大手損保、闇の構造

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さて、ホテルから手持のスマートフォンを使って、某海外医療保険会社の在北京サービスセンターを呼出しました。
アトは、映画のようにコトは運びました。
1時間以上待たされましたが、当初の構想どおり、ぎりぎり午前中に山東省立病院下痢センターに飛び込みました。
映画のようにとは、ホテルまで迎えに現れて戻るまでの一切を取り仕切ってくれた通訳の中年女性の手際の良さを要約する表現です、筆者のボキャ貧では、自ずと限界があるので、ハイ。
老人患者の付添いは、酸いも甘いもお見通しの中年女性が似合ってます。決して、筆者の希望を呑んで「マヤ/マノ姉妹」や「某タカシマ」タイプは現れません。やや太めの堅実派でしたねえ、、、
彼女は、手際よくすべてをこなし、とりわけ足早に3回も病院内を移動してカネを払って廻ったようでした。まず先にカネを払わないと医師は、カルテを書かない、ついで先に薬代を払った後に薬が出ると
、まあ病院本位の運営システムが容易に見て取れました。
余談ですが、人民とか共和制とか、タイトルはさておき、イデオロギー色の強い行政官独裁体制であることは、素人目にも明らかで、中華文化圏は、大陸・廻廊半島・列島の附属地理圏を含めてアムネスティーの更なる活躍を期待したいゾーンだと痛感しました。
因みに、彼女が行った3回目の病院内移動とは、保険金請求関係の証票取得のことであって、筆者は往復のタクシー代を含めて一切の立替え支払いを免れました。
さて、句の意ですが、件の担当医、男性、年齢不詳氏は、何もしませんでした。患者である筆者の顔すらも、まともに診ませんでした。脈診どころか、体温計の備えすら無かったようです。測定関係機器の配置も全く無く、淡い期待で臨んだ点滴投与の備えも無いようでした。
筆者が、事前に準備して持込んだ「大」の排出物プレゼントも、別室に控える白衣の女性がどうにか始末したようで、診断書に反映されたかも含めて何がなんだか判らないままでした。
最後にワットの手元には、2つのモノが残りました。
立派な冊子『問診病歴』と2種類の薬の箱です。
冊子の方は、「病」以外の3文字は簡体字なのを適当に置換えました。1〜6ページまで色々の断りが長々とあって、やっと7頁目に筆者の事が出てきます。ため息をつきたいのは、こっちの方です。
薬の方は、何となくカラフルで横文字表記なんぞも併用され、まずは適量の処方かなと言う感じ。
病院退出後、付き添ってくれた通訳女史に、病名を尋ねました。何せドクターは、終始ワットと眼を合わせようとしなかったのですから、、、、女史曰く
7ページに諸々書いてあるでしょ、ポイントは急性腸炎、とのこと。
ありていに言えば、ワットは医師も病院も尊大過ぎる恰好だけ、信頼に耐えないと思いました。
ただ、映画のような状況推移だけは納得しました。
それは、2つに要約されます。
まず、医者のため息の意味するものは、こうです。
生産年齢をとうに過ぎた老人が、海外旅行なんぞとんでもない。それもこのクソ暑い時期に「屎」を持込むとは、、、
仕方なく、ワットとゲイリーの統合を図るために、病名を自己診断する事に決めました。その病名は、かなり長いのですが、多重人格性乳児0歳に備わる未熟さを思えば已むなしと言うべきかも、、、
行政官天国において最も刺激を無意識の下に感得して劇症発症しやすい急性大腸性カタルと診断した。因みに、再発を阻止する現実的処方としては、行政官天国が偏在するユーラシア大陸中央から東辺部の滞在を避けるか、さもなくば、アムネスティーの言う人権尊重が実現しているより民主的な地域への渡航を専らとする必要があると宣告された。
<以下脚注>・・・・筆者の独断とする
済南<チーナンまたはジーナン>は山東省の省都
人口約560万人超。黄河流域に属す。省の内に山東半島青島ビールなど外患を抱えたせいか、複数の宿で外国人お断りと言われた。表現は外国人でも、相手の真意はニッポンジンであったかも知れない。
1928年頃日本軍による山東出兵なる占領が何度か
あった。
因みに、筆者の本名には「たなか」とか「義」なる発音や文字を含まないが、訪問時季が列島における敗戦と鎮魂の8月の直前であったから、考えさせられた。
今日はこれまでとします。