耄想陸行録ーNo.4

* 大発見 内なる宇宙に エイリアン
〔自註〕これまで茫茫とただぼうぼうとラフかつアバウトに生きて、とうに還暦は過ぎた。この年齢になって自らの体内に、異なる人格の者が住んでいるとは、実にうかつにも知らなかった。
だが、その大発見を機に、ワット・ホウジィは、同居人に名前を付ることにした。
その名は、ゲイリー・シャージャーだ。
異なる人格者の発見は、次のような経過であった。連続3週間の旅で、最も長く滞在、延べ6泊した西安<シーアン、陜西省の省都、人口約700万。脚注あり>においてであった。
ここは、古称が長安で、西周前漢・隋・唐時代は首府があった。最近の発掘例では、秦始皇帝陵墓や兵馬俑があるなど、世界遺産が多い。
その西安では、残念ながらどこにもに出なかった。
ここからは、筆者の勝手なる解釈であるが、ワットの意志に反して、ゲイリーが暴動を起こしたのだ。
ワットの人格は、おそらく首から上に所在するのであろうが、炎暑厳しき折柄の中国内陸部ではあるが折角の機会なのだから、積極的に現地視察に趣くべきとする意向であった。
対するゲイリーの人格は、おそらくベルトから下に所在し、その中核部分は大腸付近にあると思われる。
その意向は、ひたすら人生は気長に考え、生きて内地の土を踏むため、現地視察を見送るべしとするものであった。
ワットにとってゲイリーの反発は、実に不本意なものだった。
それは、ワットなりに十分考慮して事前の節制はほぼ万全であったからだ。
生水や生野菜の摂取を回避するなど、人生の教訓を踏まえて、大陸での取材に備えた取組姿勢は徹底していたし、最悪の事態に備えて介護用の紙おむつ2種類を携行してさえいたからだ。
だがしかし、ゲイリーの消化器系統内における在庫一掃作戦は、厳然と実行された。
それに対するワットの反撃は評価に価した、24時間の絶食対策を行うなど、ワットの意識は終始はっきりしており、意気沮喪する事は無かった。
日本製紙おむつの性能を信じ、十二分に活用した。
だが、紙おむつは予防具として何度も装着されたが、実際「大」一掃作戦に向けて使われる事は無かった。
その理由は実に簡単だが、そのことはワットの意識がはっきりしていたことを示している。
在庫一掃作戦の継続時間や排出される在庫のボリュウムが判らなかったからでもある。
確かに、「大」一掃の瞬間は凌げたとしても、事後の手当つまり廃棄物としての処理過程を想像してみたまえ。
大量の加水過剰状態になったカレールーをどう扱うべきか?
そこまで見透した後、移動ではなくホテル缶詰にて対処した方がよいとワットは決断した。
折角の西安を6泊の後、ノーヒットで無念にもすごすご退散した。それもゲイリー君のうたた寝の間に、寝た子を起こさぬようにして、勿論備えの紙おむつ2種類を股間にあてがってだ。まるで、夕立スコールを盗みつつ行う引っ越しさながらの西安脱出計画であった。
読者関心の1日脱出計画は、紙おむつを温存しえた点において「大」?成功であった。
ゲイリーによる在庫一掃作戦は、その後も実施された。
そして2度ある事は、3度あるとの、先人の教えは、その正しさが証明された。
ついでながら、介護用品先進国ニッポンの先行性もまた、具体的に証明されたのであった。
今日はこれまでとします。
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「以下脚注」
西安<シーアン>の項におけるカタカナ表記/データ記事などは筆者の独断とします。
併せて、陜西はシェンジー、省は列島の道府県に相当、人口データは特別市域、公表戸籍、市区などの諸態様あることを、、、、
なお、列島と大陸とでは互いに異なる簡略化された字体=記号を採用しており、漢字<視認記号>・カナ<発音模式記号>表記のいずれによっても共通レベルに立つことは困難であろうと、、、、
また、人口規模だが、この旅で訪問滞在した複数の省都は、いずれも500万人超であったことを、、、
さて、大陸など「国境」を持つ外国の情勢を、シマグニに住み「国境」を持たず”四海”などの自然障壁をもって区画されている列島人が、仮に自己の体験の延長において理解しようとする事があるとして、それは根本において無益な事と悟るべきです。