閑人耄語抄No.30

No.30 雲晴れて  全界白銀  鳰の海
 〔自註〕 鳰(にお)は、カイツブリのこと、におのうみとは、淡水 琵琶湖を指す。12月19日近江八幡をマイカーで出立し、北陸道を北上した。ノーマルタイヤを履きチェーンを持たずに、直前の火曜日に京都まで行った帰りであった。行きに聞いた寒波の襲来は、想定外の長居であった。帰宅が延ばしのばしとなり、この日土曜日に意を決してリターンを果たした。
その後、季節の恒例の北極振動は、日本列島で連続6泊7日の大寒波を記録し、北米大陸の一部と欧州半島にも今季第一波の寒気を届けたようであった。周回振動はなるべく大洋の上に貼り出してもらいたいものだ、、、
 この日は、前夜もしくは早朝から降雪だったらしく、琵琶湖の東岸一帯は、道路の上を除き概ね地上は白かった。滋賀県は、四方に山が見える。だが、指標とするべきは、他より先んじて白く変わり、白さが際立つ伊吹山であろう。この日は走行の安全を考慮して、朝の低温時間を避けるために、ゆっくりスタートした。にもかかわらず、伊吹山を我が眼で確かめる事は出来なかった。雲の中であったようである。
湖岸道路を北に向って走りながら、西の空が少しづつ青さを拡げている様子が見えていた。木之本付近に差し掛かったあたりで、頭の上から雲は消えた。左手に水面が迫り、遠く対岸の西山を眺めながら右へとハンドルを廻した。
眼の前に新雪の山、湖面からの反射光すら受けて、眩しい。
頭上の晴天は、国道8号に入って間もなく、期待を裏切った。アトは、終日 雨、みぞれ、氷雨の中をひたすら走ったのだった。