閑人耄語抄−2

陽気はだいぶ春めいて来たが、風はまだ老体に厳しい。借家住いは、何かと帯に襷なので、ニュウヨウクは、近所の温泉めぐりをもって、これに替えることが、近頃ならいになっている。
  のみしらみ  温泉マスクを  言われウマ
 (自註)
句の意味は、こうだ。馬の骨が、マスクをしたまま、湯舟につかっていると、アラセブンティが、近くに浸かりながら、「どこか悪いのか?」と御尋ねにならっしゃった。
ただ、それだけである。いかにも、純日本的な農村風景である。
因みに、ノミシラミを、あえて漢字で書いたら、どうなるか。能美白峰と書く。
しらみねと発音するのが、本来だろうが、『ね』はねえ(=無)だから、無音にして、字余りを避けた。と言うのは、いささか狂狷附会で、知恵足らずのようだ。
「どこか悪いのか?」の答は、来たなと思い。
次に、しばらく考えて、「首から上はすべて良くない」  心の中の声、なんせウマだから
石川県に、能美市(=のみ)なる温泉と古墳の街がある。平成の大合併で、現代能美郡の3町により、新設された。一層手短かに行くと、マツイと九谷焼きの街だ。前者は、ヒデキで当り、カズオは外れだ。
では、能美と白峰の関係はどうなのか?実はこれからの説明が、少し??かなり、ややこしい。
第1の抑えは、白峰村は現在の白山市編入された。これも平成の大合併です
第2の抑え、白山市能美市は、隣接である。
第3の抑えとして、白峰村は、昭和24年から石川郡に所属<=角川版ー地名大辞典>。
抑えは、以上である。これだけでは、ノミとシラミはただ並べである。よって、しまらない。
そうです。
突っ込みは、これから。
では、今から60年以上前は、何郡だったか?
答は、ななんと、能美郡。そう、馬の骨が生まれた頃は、石川郡でなく、能美郡白峰村一気通貫だったのだ。
何故、所属替えをしたのか?その答は、簡単に見つからんでしょうよ、おそらく。
だがしかし、馬の骨の百姓詠みでは、こうだ。アクセスの方法が、馬の時代からクルマの時代に変化したので、それに応じてルートが変化し、県の威光で所属郡を変えた。
馬で行き来するには、高低差を度外視して、最短距離を採る。
クルマ持ちは、距離は二の次で、まず高低差を避けて、水平と舗装と道幅に拘わる。
そうです。古代能美郡は、そのような位置関係にあり、白山麓一帯もまた、越前国から別れたのでした。
困ったことに、まだ続きます。すみません。馬の骨は、頭が悪いもんで。どこから首で、どこからアタマかが、今もって、よう判らんがや。
つまり、要するに長いんです。
ノミ、シラミ、ウマと、3つ揃うと、ピンと来るでしょう。
あの芭蕉が、尿前関(=しとまえのせき)で、作った【 ノミシラミ ウマがしとする 枕元 】・・・・奥の細道より
さて、湯舟でお会いした、親切な地方名士のご仁曰く、
「風呂の中は、マスクは要らんぞ」。
ハイそうでしょう、おそらく。でも、マスクは、ウマの勝手でしょう。
眼光鋭い。こちとら、馬の骨とは、迫力と押出しが違う。納得したろう、早く外せとばかりだ。
そうそう、この国では、この辺は空襲も無く、未だに戦中かも?
志願兵だったかな?やつは、、、、在郷軍人病を思いだす。
レジオネラ菌は、なじらね」<=あちゃ、これはニイガタ弁やった>・・・・
な、なんと、通じた。「あれは、出入り口のマットじゃ」。
湯舟の中でマスクを外しても、良いんだよ、ウマは、でも、置き場所が無いんだわ。
やっちゃった。
「あ、そうか。レジオネラは、皮膚の接触感染か。飛沫経口感染だとばっかり、思うとった」、、、、
そそくさと、湯舟より退出した。もちろん、句にあるとおり、言われウマの方がね。