メゲーヌこく訪滞記より

第8話
オラは、ネホン州に来て、もう長い。
その数あるクニの中で、メゲーヌこくが、最も長くなりつつある。それは何故かと、よく聞かれるが、「自分でもよく判らないから、答えようがない」と言いつつ、盛んにクビを振り回す。おおむねこれで良し。
とこんが、イヤミシェンシェは、こん人は、ズージーこくのヒトデ(=補注。ここだけの話、ヒトデ星人なんだわ)、
オラに向って、「居心地がいいから、長くいるんダベえ。そこのところを、詳しく説明しろ」と迫る。
人よりも踏込みが厳しいんだわ。
オラは、こう言う。「たいげえのネホン衆は、寒い冬も、蒸し暑い夏の夜も、どちらも好きに違えねえ。
ソゴンどこが、オラとちゃう。オラは、どっちも嫌いでえ。
暑くなく、寒くなく、ちょうど良いのが、実にええ。
ぼうっと生きて、そいでもって、青い空・白い雲があるど、こたえらんねえなや」
地球のあちこちを点々として観て、判ったようなこんだが、、、、
四方が山岳に囲まれている風土は、乾燥しがちなのだ。そこだけでも、湿潤な海に面する風土とは、対照的なのだ。
「オラは、晴天、乾燥好きだ。そこを、トリのように、行きつ戻りつ、暑くなく、寒くなく、回遊するのである。
これは何も、オラの発明では無えのだ。あの声よく啼くウグイスなんぞ、朝となく、昼となく、やっているでねえか」
オラは、そう言った。
ほだら、イヤミシェンシェ曰く 「うーん、ネホン衆にも、山下清ちゅう偉い絵描きさんがおったちゃ。
ネホン州は、国土が狭いから、乾燥と湿潤の間の地域、暑い寒い季節を避けて、上手に往来すっと、両方のメリットを、享受できそうだがや。
しかし、実際に、そのメリットに受けている人は、少んねえなあ。
長野県軽井沢町なんかだは、、、、夏の時期とそれ以外では、随分と住人数が異なるべえよ。
本拠を首都圏に置いていたり、東京に家族が居て、時々行き来する住人が多いべ。
軽井沢までが関東圏の内だと、真剣に思い込んでいる人も多いらしいぜよ。
ただ、それが、出来る鳥人族は、圧倒的に少ないにゃあ」
その点、オラは、先立つものが、乏しく、クビの回りが涼しく、いっつも盛んにクビを振り回すが、一向に定住に必要なお宝には達し無え。
オラにとっても、定住生活は、理想に思える。オラも、暑さ寒さに耐えて、どっちゃり、腰を据えてる生活に、なじめたらばにゃ、もう少しクビの回りも改善するベエな。
しかし、イヤミシェンシェは「そうでなや」とのたまう。
「ネホン衆は、集団の中で、奴隷のように、一生を送るのが、最高の幸せと思う、ヒツジ人種なんだわ。
一人一人のタイトルは、社長と呼ばれようが、ヒラメ社員と言われようが、大差は無え。
等しく組織に縛られている。
組織のカタチなり、キャプションなりは、昔軍人、今会社人、これがマジョリティで、一見変化しているようだが、結論としては変らんちゃ。
わざわざ、仮想敵をでっち上げて、一斉に同じ方向に向かって、真剣に走る。
この集団の中で、しらけている奴は、決まって干される。集団狂騒の中で、組織から無視され、早晩、抹消される。
内にも外にも、わざわざライバルを、求めて、決めて、抜きつ抜かれつを、やりたがる。
例外無しの、全員参加、全力疾走、いつも、総力戦の、いつも、判で押したような、
ワンパターンのアプローチ。
何をやるにも、お祭りスタイルでにゃあ。
隣り百姓の、横並びは、国民性なんだろうなあ。
とまあ、こん話しば、時代錯誤の茶番を、いつまでも演ずる、政界のどたばた騒ぎを、想定してのことだがにゃあ。
アメリカンフットボールのように、デフェンスとオフェンスの役回りによって、フィールド出場メンバーを入れ替える。
まあ、こったらような、発想の転換、コンセンサスのチェンジが、そろそろあるべきだっちゃ。
あの黒沢映画の「七人の侍」でも、盗賊の襲撃に、立ち向かうのは、侍ちゅうプロ集団だ。
異質な発想の、異なる価値観の人間を、内部に抱えて、追い出さないこと。
多様な価値観、複眼の要素を、数多く内部に維持する思想・戦略に転じるべし。
そんことをせんで、いつまでも、過去の延長で、
やれ、モノづくり。そら、輸出で行こう。そいでは、夢も希望も、寂しいのだわ」
オミしゃんにプー