ホームレス考

+<ホームレス考>
1、今日から暫くホームレスを考えたい。
 2000年7月から通勤場所が池袋に変った。サラリーマンは配置転換でどこへでもやらされる。いやなら退社するまで、、、、手に職があるか、舌が複数あるか、眼と耳の奥に力のある人はさておき筆者のようにそのいずれにも該当しない者は、ホームレスの一歩手前のような存在だ。
 デスクのあるオフィスは、環状鉄道で下車し、徒歩5分くらいである。朝の9時少し前の時間、明治通りを越えてすぐの横道に、見渡す限りゴミが散乱している。花見の頃の木の下つまり宴会のさなかに雨が降ってきて参加者が消えた状態さながらだ。
それが池袋の路上では、年中そうなのだ。でも、昼休みに外出すると朝の散乱状態は消えているから不思議に思い、守衛に尋ねた。毎日行政が手配して清掃をするのだと言う。
 東京に暮らしてその頃既に15年以上経っていたが、初耳だった。守衛氏曰く、かつて新宿がホームレスのセントラルベースだったが、都庁開庁により、行政が排除に注力した結果、相当数が池袋に移動したのだと言う。
 夜の見回りをする立場にある守衛氏に、この際いろいろ質問したが、彼もその任ではないから多くは返って来ない。ただ、相当数が毎夜現れて、路上で過ごし,朝になると消えるのだと言う。しかも、夜の間、互いに壁一枚隔てて居る事に不安を感じないのだと言う。彼の推測では,警察当局と話がついているとのこと。
 驚きつつ、しかもある種の感動を覚えた。経済大国、首都で、しかも中央集権制のため政治経済社会活動のすべてが一極独占で、立憲君主の足元で、対価を得て安全を業とする言わば専門家に雇われる守衛氏が「彼らは安全だ」と言うのだ。
 なんと、このクニは素晴らしい。日本人が優秀だ、しかも世界一だ、さもありなん。日中は目障りだから消えろよと言われ、人間としての尊厳に関する差別を受けてもムシロ旗の事態にならない。中年リストラ層を中心に年間3万人が自殺すると言うが、ムシロ旗は、大正時代が最後だったとか、、、せいぜい衆人の眼に触れる所で最後を迎えたいと想うためか電車に飛び込む程度の自制が働いている?
 なんと、個人・自由が末端まで確立している事か?素晴らしい
 信教の自由を始めて140年、欧米社会の基幹をなすあの強力な一神教団体が総力を挙げて140年布教に注力したにも関わらず成果は惨憺。その真の原因は、どうもこの辺にあるのかも知れない。
 布教云々は,筆者には無縁だが、ホームレスをより深く考えてみたい