いかり肩ホネ五郎の病床寝惚け話No.13

吾が住む北陸は、まだ梅雨のうちである。
とは言え、カラつゆ気味だからであろう。結構暑さがこたえる。
頼るものは、冷房エアコンで、已むなく就寝中も定温モードでどうにか寝ている。
とは言え、眠りの質はかなり悪い。
それが証拠に、寝つきも寝起きも芳しくない。
つまり、エアコンが嫌いな方なのだ。
古い・かなり壊れた者が、無理して延命を図って、生きる図式である。
実は、前歯が黒ずんで穴が空いている。見た目が悪いが、直さないでいる。
先立つ金が無い事もさりながら、歯の治療もまた延命措置なのだから・・・
ガン細胞が、ほぼ消えた状態まで待ってから、ゆっくり歯に投資をしようとの合理的?な画策である。
それでも理想がある。
窓を開けて、自然界の揺らぎある(1/f)風を身に受けながら、眠りたいのだ。
その当たり前が、今はできない。
何故か?
主に原因は、吾が住むブロイラーハウスの周囲の”犬害”にある。
吾が住む集合住宅は、買う前にペット飼育禁止である事を確認している。
だがしかし、この下駄履き住宅ハーモニカ長屋の周囲のアパートは、そうでなかった。
朝となく昼も夜もバウバウととめどなく吠え続ける。
中には、声がかすれ、喉頭炎を患っている感のある奴もいる。
だがしかし、彼等に言葉は通じないであろうから。いい加減にして止めたらと説得には行かない。そんな状態だから一方的にこっちが窓を閉めて対策するしかない。
こっちが神経質すぎるのかもしれないが、これは大誤算だった。
マンションが立て込んで、全体的に越後湯沢リゾートのあの光景に近いのだ。
窓を開ければ、緑の草原ではなく。窓を開けたら向かいの窓状態だ。
しかも、トイ面の住人は、こっちが就寝するか・熟睡した頃に、帰宅するらしい。
カーテンは、白い半透明のものしか無いようだし、夜じゅう点灯して眠るクセらしい。
ヒトは本来夜は眠る者であって、休息時間まで削って働きまたは遊ぶものではない。
その本性に反して人が夜活躍するようになったのは、長い人類史の中で最近140年のことらしい。
エディソンが、白熱電灯を発明して以来こっちの事だから、技術的に未熟でありかつ未だその取扱が不完全にして、必要以上に行き過ぎて、無理しているようだ。
もっと、夜間電力料金を高く設定してもよい。照明器具のルックスを下げるもよい。
どう置いても真下を照らすか・明るさが届く範囲をごく狭くなるように器材を改良するもよい。僅か140年程度では、未熟で中途半端な技術レベルでしかないのだ。
しかも、この住人は、帰宅直後に飼い犬を家の外に出す。それが日課のようだ。
雨の夜などは、さすがに犬も直ちに家の中に戻せと喚き出す。が、殆どその効果はないらしい。
そこへ、真夜中に犬の供をして散歩するご仁が通る。
畜生どもは、前後も・時間帯も・吾が就寝気分をも考えずに、互いを喚き散らす。
とここまで書いてきて、お断りがいると思う。
すべて、耳で描く情景である。眼で見た状況ではない。
ベッドに入ったら、原則起き出さない。それが吾がルールだからだ。
ワットには翌朝、ゴミ出しがある。吾が専業的仕事である。
梅雨時でも、朝はささやかながら風が吹いている。
まさにその時だ。夜間飛行かミッ子かゲロンか、またはその入混じったような香りが飛んで来る。
ここは住宅街だから、出勤の美女が立っているかと気を漲らせて背後を振返る。
確かに立っているではないか。電力会社提供の柱だ。
電柱の裾のあたりが、濡れている。高さと言い・色といい・複雑に絡み合っている。
夜となく朝となく犬の縄張り争いの集中放水を浴びて、奴らは長い間に毎日の放尿を浴びて相当に変色している。
これは、新種の公害である。「ちまた香水」と呼ぼう
この鶏小屋に転居してくる前は、家の向かいは田んぼだったから、住宅田園混在地域であった。しかし、その田園からあの「田舎香水」なる歴史ある糞尿の匂いは消えてもう久しかった。
転居して専用住宅街に来たら、なんと「ちまた香水」が日夜振りまかれているではないか
おそらく住民数とペット数とは、ほぼ同数に近いであろう。
それだけの糞尿が、この狭い住宅ブロックに無制限に放散・放置されたら、パンデミックはきっと間近に起ることであろう。
上下水道が完備した現代都市にパンデミックとは、時代錯誤と考えたい。
しかし、折角の上下水道と無縁の・何をしても許されるペットは、無菌だろうか?
ペット同居族の周辺から、疫病の火の手が起る懸念なしとしない。
食糧自給率が既に40%を切るこの社会が、何故これだけ大量の寄食動物を養えるのか
不思議でならない
なぜ眠れないか??? もうお分かり戴いたかな
それにしても、もっと広い家が欲しい。隣人の、否、隣の犬の吠え声を聴かないでよいくらい離れていて、窓を開けて涼を求められる、そんな家が欲しい。