高尾山独呟百句 No.5 by左馬遼嶺

しずまれよ  ふぶきにイカダ  雨と風
〔駄足吠語〕
標題句を漢字で書くとこうなる
  鎮まれよ  花吹雪に花筏  花嵐
この年の一期一会の花とも、ついにお別れである。
来年の再会を胸の奥に秘すのみである。
閑話休題
実景を踏まえているが、幾つかのシーンを眼の奥で、連続写真のように重ねるか・加工している。
〔吼爺放談〕=hodgyの阿呆談話と読む
春は、それぞれに花が開く、百花繚乱の時である。
サクラ就中ソメイヨシノは、格別に吾が列島人に愛されている。と言っても、ソメイヨシノは、近年人工的に造り出された種苗にして、更にまた戦後も人工的に植付け面積を急拡大したらしい。
概ねこの100年の間の人為的造園投資の成果である。
城とサクラの組合せが、このワン・パターン民族の共通の好みと言えそうだ。
吾が親しい友人某氏は、「単元唯一を志向するドグマ」と酷評している。
要するに、1つに絞り込めば、覚えやすい。スローガンやPRタイトルとして。
例えば、明治維新とか文明開化などが浮かぶが。権力が実際に打出したものには、タイトルに反して、律令古制の回復が含まれていた。
イケイケどんどんの国民性もあって、スローガンさえよければ、馬車馬の疾走となる傾向が強い。
敗戦から70年以上経過して、内外ともキナ臭い。
戦後の平和は集団防衛なる誤った新語を以て、突き崩されつつあり。再び恐怖の体制国家が再燃する懸念が増している。
とまあ、サクラ特にソメイヨシノは、人口配合種のクローンだけに、一斉同時に咲き始め・同時に散りはじめる。
それは、農事暦としては好都合だが。背景に城が伴うとサムライ=軍人軍部を連想させるし、昨今の政局の右傾化を踏まえて、いささか心寒いものがある。
負けた事をのみ悔いるが、その背景や原因について、反省も総括もしていない。よって危うい。イクサの勝ち負けよりもっと大きいものがあるはずだ。
その点、横山大観の画題は、オオヤマザクラと富士の嶺の組合せが多いようだ。
彼の絵は品格が良い
彼の活躍期が、ソメイヨシノ膨張的植栽の前夜だったからかもしれない。
オオヤマザクラソメイヨシノは、人工的配合での親子らしいが、子に当るソメイヨシノは、若い頃から樹木=幹や枝がボロボロである。見るからに短命を予感させる。
花を咲かせることに特化した植栽種として、採用されたらしい。
その結果備わった短命の特徴であるらしい。
このソメイヨシノに関する風説は、俗説かもしれないが、”特攻精神”に通ずるものがある。
後発のソメイヨシノが、親株のオオヤマザクラよりも短命であるとしたら、それはモノの道理に反しており、それではクニは立たないであろう
栽培樹木に詳しくない筆者だが、オオヤマザクラはまず葉が出て・その後に花が咲く。この春先に起る植栽反応はリーズナブルである。
すべての栽培種にとって葉は生産部門(=個体維持)であるに対して、花は消費部門(=種族維持)である。
その点、ソメイヨシノは、アン・リーズナブルである。
何よりもまず最初に花が咲くからだ。
葉は歯に・花は鼻になぞらえて、オオヤマザクラは”出っ歯”と呼ぶとか・・・<笑>
花嵐は、来ない事が望ましい。かりに来ても速やかに静まって欲しい。
平和こそ究極の理想である。